注目したいCO2原料化技術への挑戦
石油など化石資源に依存しない化学原料製造プロセスの開発は、21世紀の化学技術における最重要テーマとなろう。セルロースなど植物資源を原料とするバイオマスプロセスとともに、水や二酸化炭素(CO2)から有用な化学製品を供給できれば、究極のグリーン・サスティナブルケミカル(GSC)プロセスということになる。経済産業省は来年度から、CO2原料によるオレフィンなど基幹化学品の技術開発に着手する。
日本経済の再生には世界をリードする技術を背景とした新たな製品・サービスが待たれている。第4期科学技術基本計画でも政府予算の増額が打ち出され、産官学連携による技術開発の強化が模索されている。一方で、政府の技術開発プロジェクトも出口が見えやすい応用研究が増える傾向にあり、「目先の研究ではなく、企業が手を出せないような長期かつハードルの高いテーマに挑戦してもらいたい」という注文が出ている。
イノベーションによる競争力強化は化学工業にとっても喫緊の課題で、そのキーワードはGSCにつながる技術・製品・サービスに集約されるだろう。すでに日本の化学企業が得意とする高機能材料や部材では、より性能や機能を高めるとともに環境負荷低減を目指した技術開発にしのぎを削っている。その基盤となる基礎研究や評価技術では産官学連携の取り組みが具体化しているが、長期的な原料問題に挑戦するには国が主導することが不可欠となる。
経産省が来年度予算に要求している「革新的触媒によるCO2原料化基幹化学品等製造プロセス」は、資源枯渇や地球温暖化を見据えた技術開発だ。発電などで排出されるCO2を化学原料にするとともに、水を光触媒で分解して水素が製造できるようになると、化学工業の姿は根底から覆る。ただ、本格的に導入されるのは20年程度先になり、その時点で化石資源原料の20%程度を代替するという息の長いプロジェクトでもある。
安定した化学物質であるCO2を分離できる触媒開発がカギを握り、大学など研究機関の英知を結集できる技術開発態勢を構築できるかが問われる。技術の目利きができる人材提供なども含めた産業界も支援も重要で、国プロジェクトの陥りやすい「動き出したら途中で修正できない」ことを防ぐ技術開発のPDCAのサイクルを徹底させることも大切になろう。
現状の原油価格などを考えると、バイオマスを含めて非化石資源原料の競争力確保は容易ではない。技術のハードルが高いことも明らかだ。政府には技術開発に加えて用途開発支援など総合的戦略を期待したい。