【持続成長と化学の力】(10) 昭和電工 市川秀夫社長
全国で20の拠点を数える昭和電工にも東日本大震災はさまざまな影響を及ぼした。震災後には電力問題にも直面したが、水道など生活インフラを支える化学品の安定供給に全力で取り組んだ。経営環境が激変するなか、"ポスト3・11"の日本経済、昭和電工の行方を市川秀夫社長に聞いた。
※電力問題が転機に※
▼ 震災が日本の産業に与える影響をどうみていますか。
「第2次産業に関しては深刻な影響はそう残らないだろう。むしろ震災を通じ、日本のモノづくりが持つ底力を示せたように思う。例えば技術力の高さや事業基盤の強さがそうだ。これら日本の産業が持つ強みを再確認できた。とはいうものの、いくつかの構造変化は生じてくるはずだ」
▼ 具体的には。
「まず電力供給の問題が挙げられる。震災を機に、原子力や電力料金をはじめいろいろな課題があらわになってきた。大きな転機に間違いなくつながってくる。次にサプライチェーンの見直しが進んでくる。カンバン方式に代表される調達方法は、日本産業の力強さを支える源泉であった。ただ、今後は需要家サイドでもある程度の在庫を抱えざるを得ないかもしれない」
▼ 被災地にある企業のダメージも気がかりです。
「3番目の変化がそれだ。東北地方の太平洋沿岸部には自動車やエレクトロニクスなどを支えるうえで大切な役割を担っている中小・零細企業が数多く集まっている。こうしたメーカーが再起できるかどうかも、日本の産業の将来を左右してくる。再編・集約も進んでくるだろう。一連の帰結として生産・調達機能の海外シフトが生じてくるはずだ」
※中長期ビジョンを※
▼ こうした動きと向き合っていくためには。
「政策、個別企業の取り組みに分かれるが、中長期的なビジョンを描くことが必要になる。日本の企業は6重苦だとよくいわれるが、政策面では法人税軽減や環太平洋経済連携協定(TPP)参加といった選択が求められる。個別企業でいえば、事業ポートフォリオを変化させていかなければならない」
▼ 果たして日本でモノづくりを残すことは可能ですか。
「日本で事業を続けていくには、コストは高いが世界一の質を誇る日本の社会インフラに見合った価値の創出が欠かせない。換言すれば高コストであっても利益を生み出せる製品は国内に残せるだろう。医薬品など知的財産と関わりの深い製品も同様だ。また、水道や電気などライフラインと直結する基礎化学品、当社なら次亜塩素酸ソーダ、アンモニアなどは国内に置いておかなければ駄目だ」
※個性派化学に磨き※
▼ 昭和電工の場合は。
「ハイエンドの製品あるいはバルクでもオンリーワンの製品は国内で生産を続けていく。以前から昭和電工は脱・総合化学を旗印に、?個性派化学?を標榜してきた。1月にスタートした中期経営計画『ペガサス』でハードディスク(HD)と、人造黒鉛電極を主軸に据えたのはその流れを受けたものだ。われわれ化学・素材産業の果たす役割が相対的に大きくなってくるなか、その流れをさらに加速していくことになる」