製造業の縮小・地盤沈下に危機感を
リーマンショック後の世界同時不況で急激に落ち込んだ2009年に比較すると、10年の製造品出荷額、付加価値額はV字回復を果たしたものの、事業所数、従業者数は減少には歯止めがかからない。経済産業省が発表した工業統計速報から、わが国製造業の地盤沈下の実態が浮び上がる。さらに東日本大震災の打撃に加え、円高など「六重苦」という厳しい環境が続いており、ものづくり産業の再生は日本の大きな課題である。
金融危機が実体経済に波及したことで09年の出荷額は、前年比21・0%と統計調査開始後の最大の下げ幅を記録した。10年出荷額は各国の景気対策の効果もあって278・8兆円、同8・0%と4年ぶりに増加に転じたが、水準は04年をようやく上回ったレベルである。付加価値額は同じく4年ぶりの増加となる11・9%増の86・1兆円だが、水準は21世紀になってから下から2番目である。
製造業の厳しさを鮮明に示しているのが事業所数で、10年は12・4万事業所、前年比2・5%減と4年連続で落ち込んだ。01年は15・5万事業所に比較すると20%以上の減少だ。従業者数は697万人、同1・7%減と3年連続、01年の791万人と比較すると12%減ったことになる。この10年間、グローバル規模で競争が激化、収益重視を迫られた製造業は不採算事業所の統廃合や人員削減によって必死に利益を維持しようとしたことを物語っている。
資本集約型産業である化学工業の場合は、10年の事業所数は3760(構成比3・0%)、従業者数は33・5万人(同4・8%)とウエートは小さいが、対前年比はそれぞれ2・3%、1・9%の減少と縮小が続いていることに変わりがない。
一方、化学工業の出荷額は25・8兆円、前年比7・2%と3年ぶりに増加した。全製造業のなかの構成比は9・3%を占め輸送機械に次ぐ規模である。ただ、28兆円台まで増加した07年、08年の出荷額には及ばない。これに加えてプラスチック製品の10・3兆円、ゴム製品の2・9兆円の出荷額を含めた広義の化学工業は39兆円を超えて構成比は約14%に上昇するが、ピークの07年44・2兆円と較べると10%以上シュリンクしている。
化学工業は他の産業に比較して付加価値額が高いことで知られている。10年は10・0兆円、前年比10・4%増となり、構成比(11・7%)は輸送機械の15・2%に次ぐ。プラスチック製品、ゴム製品も前年比プラスで構成比は17・4%と有力産業の一翼を担う。ただ、化学関連産業が引き続き成長を続けるためには、国内製造業の活性が不可欠なことは論を待たない。