設備過剰対策に動き出した中国政府
一時は「正式発表は時間の問題」とも言われていた富士重工業の中国・大連への自動車工場進出計画。中国政府は9月末に「中国企業との合弁会社設立を認めない」とする方針を伝えていることが現地の報道などによって明らかになった。
大連市では昨年半ばから「日系準大手自動車メーカーが現地生産を検討している」という話題が関係者の間で取りざたされていた。合弁相手は奇端自動車(チェリー)で、進出先は同社が組立工場を操業している大連保税区二十里堡が確実とされていた。この情報に続いて、昨年末には関係する日系ティアワン、ティアツー部品メーカーも調査を始めるなど、富士重工業の中国進出が具体化に向けて進んでいた。
中国では、外資自動車企業が中国企業と合弁で設立できるのは2社までという制限がある。富士重工業はトヨタ自動車が出資するグループ企業。許認可権を持つ国家発展改革委員会は、この規制を理由に富士重工業の合弁会社設立は認可できないことを伝えたようだ。
中国の自動車市場は急成長を続けているが、一方で多くの社会問題も表面化している。中国政府は、電気自動車などのエコカーに関しては引き続き誘致したいという意向があるようだが、環境負荷の大きなガソリン車の生産は、これ以上増やしたくないことを示している。
中国では今、自動車をはじめ様々な工業分野で生産過剰が指摘され議論を呼んでいる。かつて中国政府は、国営企業の統廃合を含め構造改革の大ナタを振るったが、最近では確実かつ安定的な経済成長に向け、過剰生産企業や業種の統廃合や生産削減を押し進める強力な方針を打ち出している。
産業政策を担当する工業・情報化省は鉄鋼、セメント、板ガラスなどを生産過剰状態にある業種と発表した。こうした業種については国家方針による統廃合、設備削減を行い健全な発展を進めることを表明した。自動車に関しては、生産過剰という表現は避けているものの「重点業種として企業合併・再編の促進」が望まれるとしており、構造改革の必要性を認識していることを示していた。
今後、国家戦略に基づいて生産能力過剰業種は管理が強化されることは確実であろう。今回の富士重工業のケースは、生産過剰によって引き起こされる経済の混乱を何よりも避けたい中国当局の意向が図らずも鮮明になったとして肝に銘じるべきではないか。急成長による環境問題などが各地で顕在化している化学工業も例外ではないだけに、政策や事態の推移を見守る必要がある。