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2011年09月28日 前へ 前へ次へ 次へ

ワクチンと放射線適応応答

 ワクチンは感染症に対する免疫を体内に作りだす。接種によって重症化を予防できるのは、生体の免疫記憶という仕組みが働くからだ。ウイルスなどを覚え、侵入した際に抗体で攻撃するメカニズムには、血液中のリンパ球が主要な役割を担う▼英国の医師エドワード・ジェンナーは200年以上前に、牛痘のヒトへの接種が天然痘を予防することを見いだした。牛痘のウイルスはヒトへの感染では症状が軽く、接種すると天然痘に対する免疫を獲得できる。ジェンナーの発明は近代免疫学の礎になった▼「放射線適応応答」という、免疫に似た生体現象がある。低線量の放射線をあらかじめ浴びると、高線量被ばくによる障害が軽減されるというものだ。細胞が放射線被ばくの経験を記憶し、防護的な因子を出すなどの応答をするという▼低線量の放射線が生体の免疫機能を高める「ホルミシス効果」というものもあり、世界で多くの論文が発表されている。湯治で有名な温泉には、この効果が謳われているところも多い▼ウイルスや細菌を製造に利用するワクチンは毒で毒に対する抵抗力をつけるものであり、放射線にも同じような効果があるのかもしれない。人間は自然界からの放射線を常に浴びており、健康への影響がよくわかっていない低線量の科学的な解明が必要だろう。


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