海外でも顧客志向で競争力強化を
急激な円高で企業の海外生産拡大が加速しそうである。安い人件費に着目して早くから投資が活発化した中国、タイは日本企業の集積が進んでいる。顧客に連動するかたちでグローバル展開を進めてきたファイン・スペシャリティ業界も同様だ。一方で、これらの国でも韓国勢や中国勢、また現地企業が力を付け、価格を武器に攻勢をかけている。この競争に打ち勝つには、日本国内で展開してきたきめ細かな顧客対応の横展開が求められてくる。
例えば、自動車産業の集積化が進むタイ。東日本大震災の影響で日本からの部品調達がストップし、自動車生産に支障がでたが、この遅れを挽回すべくメーカー各社は今年下期から強気の増産計画を打ち出している。これにより同国における今年の自動車生産台数は当初見込みの180万台規模に達し、来年は200万台程度に拡大するとの見方もある。
タイに進出している自動車メーカーは日系企業が多く、そのため現地における日系塗料メーカーは自動車向け市場でシェアが高い。「上期は前年比で2ケタ増収を確保したが、自動車メーカーの増産計画を受け、さらに拡大が期待できる」(日系塗料メーカー)状況にある。
同国の人口は約6800万人で、東南アジアでは約2億4000万人のインドネシアのほかフィリピン、ベトナムに次ぐ規模。今後の成長が見込める近隣市場は魅力的であり、タイは輸出拠点としての役割が増すだろう。東南アジア諸国の生活水準向上により化粧品・トイレタリーなどの需要拡大も期待できる。
タイはインラック政権誕生で内需主導策から、上下水道など公共工事に使用される塩化ビニル樹脂製パイプ・継手などの需要も期待されるが、同樹脂向けの安定剤は現地や近隣諸国の低価格品攻勢で競争が激化しているという。このなかで日系メーカーは「顧客ニーズに合わせたカスタムメードを強みに」差別化を図っている。
震災で日本からの原材料調達がストップした海外メーカーは様々な代替品を調達し、日本品以外のものでも使いこなせることを証明した。このことは日本製品の供給減や価格下落にもつながりかねない。このなかで勝ち抜く手段は高品質なら売れるという既成概念を捨て、さらに顧客志向を強める気概を持つことだ。
そのうえで海外でも日本市場と同様な顧客対応を、日系ユーザーはもとよりローカル企業に対しても進める必要がある。国内は特殊品、海外は汎用品といった画一的なグローバル戦略は、見直す時期に来ているのかもしれない。