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2011年09月13日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載】水市場 目指せフロンティア(上)

 世界の水市場で日本企業の取り組みが多様化してきた。化学関連企業は水処理膜の供給を軸としてきた事業に加え、運転・管理をはじめとした「水ビジネス」の本格展開を目指す。アジアで次々浮上しているスマートコミュニティ(環境配慮型都市計画)には、水処理技術を切り口にエンジニアリング企業が名乗りを上げている。2025年に85兆円とも試算される市場で、利益の8割を占める運営・管理分野は欧州水メジャーが先行。ただ、成長が見込める新興国には法規制や経済格差など多くのリスクが存在する。従来にない事業モデルが求められるだけに、新天地を目指す競争は始まったばかりだ。

中国に照準、着々と協業

※新中計の重点分野※
 世界的な水処理膜メーカーである旭化成、東レ、三菱ケミカルホールディングスグループの三菱レイヨンの3社は、今期から開始した新たな経営計画で水処理事業を重点分野に位置付けた。三菱レイヨンの姥貝卓美専務執行役員は、膜分離活性汚泥法(MBR)による下排水リサイクル事業で「海外で新しい市場を開拓する」とし、水処理事業規模の約6割を担う中核へ育成することを表明した。長期間利益を安定確保できるビジネスの主体となることで水処理事業を拡大し、全社における新たな収益基盤を作る狙いだ。
 3社が最大市場として重視するのが中国だ。産業発展や個人の所得増加にともない水不足は深刻化しており、中国政府が今年から開始した第12次5カ年計画では環境規制が一段と厳格化された。クリーンな水資源を確保するため、水処理膜による浄水や海水淡水化、MBRによる下排水再利用化への需要は今後一層拡大する見通し。

※許認可など高い壁※
 中国は世界の水処理企業にとって直近の最大市場と目されているが、進出には高い壁が立ちはだかる。公共案件や一般産業案件共に参画には官庁の許認可が必要で、地域によっては国内企業を保護する優遇策がある。また、水処理膜の導入は積極的だが、現地メーカーにより類似品が安価に投入されるため価格競争が厳しい。競争入札においてはランニングコストよりも初期投資が重視される傾向にある。
 こうした市場で戦うためには、現地企業との連携が欠かせない。三菱レイヨンは昨年、大手膜メーカーの北京碧水源科技と共同で下排水処理用中空糸(MF)膜の製造・販売会社を設立することで合意。東レは今年1月から藍星集団と共同で設立したRO膜工場を本格稼働させている。「年内にフル生産・販売体制にもっていく。中国事業を一気に立ち上げる」(東レの大谷洋水処理・環境事業部長)構えだ。さらに両社は現地エンジ企業と下排水のリサイクル事業の体制を整えつつある。
 旭化成は米国で現地エンジ企業のポールとの協業によりMF膜シェア7割を確立した。水処理膜でアジア事業拡大を目指す両社は、中国においてもシナジー効果を発現している。さらに、同社は現地エンジ企業との協業構築に乗り出した。実施中の排水リサイクル事業では、内外企業との連携により鉄や石油化学など大量に水を使用する工業団地へ展開する検討も開始している。

※技術サービス重要※
 旭化成の麻薙幸雄マイクローザ営業部長は「中・韓メーカーの台頭により競争は厳しさを増している。当社の膜の優位性を証明するには時間がかかる」と語る。イニシャルコストが重要視される一方で、水処理膜の性能向上にともない長期間の使用が前提となりつつあり、「長期間にわたり品質を保つ技術サービスが重要で、実力の見せ所だ」(同)と話す。
 東洋紡は今年6月からサウジアラビアに伊藤忠商事らと共同で設立したRO膜の製造・販売会社を通じ、RO膜の運転や水質を中長期間保証するサービスを開始した。既存・新設プラントに提案し、契約が増加すれば現地スタッフを拡充する考えで「プラントの運転ではなく、無形のサービスを提供する」(藤原信也アクア膜事業部長)。将来的には中東から北アフリカへ展開していく考えだ。
(次回から機械・エンジ面に掲載)


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