長谷川櫂の詠んだ暗愚の宰相
俳人として知られる長谷川櫂の「震災歌集」(中央公論新社)が出版されたのは5月初め。3・11の震災直後からのわずか12日間に詠んだ119首を収載した同書は、多くの紙誌が書評で取り上げた。書店では平積みにされ、日ごろは短歌に馴染みが薄い層も読者にした▼俳人がなぜ歌集なのか。文字では主観の表現に足りないのだろうとは素人考え。著者自身は「はじめに」で「荒々しいリズムで短歌が次々と湧きあがってきた(中略)。なぜ俳句ではなく短歌だったのか、理由はまだよくわからない」と率直に述べている▼被災地の人々の無力感や心の痛みを掬い取るような作品には胸を衝かれる。その一方、文字通り荒々しく激しい表現で政府や東京電力の対応をなじる作も少なくない。「日本に暗愚の宰相五人つづきその五人目が国を滅ぼす」もその一首▼ほかの4人を暗愚と断じることには異論もあろう。が、5人目には国を滅ぼしかねない言動があった。国家的危機への適切な対処を欠きながら官邸に居座り続けた▼きょう29日に新しい民主党代表が決まる。内閣はようやく総辞職し、それを受けて新首相が国会で指名され、週内には新内閣発足の運びとなる。政府が取り組むべき課題は山積する。新宰相が6人目の「暗愚」という事態だけは願い下げにしたい。