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2011年08月26日 前へ 前へ次へ 次へ

再生エネ法施行に産業政策の視点を

 菅直人首相退陣の条件として注目を集めた再生可能エネルギー特別措置法案が26日の参議院で可決、成立する。当初の目的は地球温暖化対策だったが、原子力発電所事故を契機に「脱原発」の切り札として関心が高まった。一方で再生エネルギーによる発電コストは割高だけに化学、鉄鋼など電力多消費産業の負担軽減措置が与野党間で合意したことは評価したい。今後の制度設計を見守りたい。
 すでに太陽光発電の余剰買取制度は導入されているが、東日本大震災の発生した3月11日に閣議決定した再生エネルギー法案は、現在9%程度に止まっている太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスを用いて発電された電気全量の買い取りを電力会社に義務付け、エネルギー供給構造の変革を促すものだ。
 再生エネルギー導入によるコストアップ分は広く国民が負担することになるが、過大な負担を強いられる電力多消費産業の軽減措置が焦点になった。日本ソーダ工業会など負担軽減を求めたが、経済産業省は特例措置は認めないというのが方針を示してきた。
 太陽光発電の買取制度で先行しているドイツでは特例措置を導入している。わが国でも経済活動の基盤を支える産業が国際的にイコールフィッテングで競争するためには不可欠な対策という認識に基づいて見直された。そして売上高に対する電力使用量の比率が製造業平均の8倍を超える場合は、8割以上の軽減措置という基準が示された。また買取価格の決定は経産省から中立的な第三者機関に委ねることになった。
 ソーダ業界は年間100億キロワットの電力使用量のなかで3分の1程度を買電に依存しており、今年1月に年間16・5億~22・4億円の負担増になると試算したが、さらに膨らむ可能性があった。また日本産業・医療ガス協会は、製造業全体の売上高100万円当たり電力使用量は0・5メガワット時に対して、産業ガスは20メガワット時と40倍になっているという。ソーダ製品、産業・医療ガスは国民生活に不可欠だけでなく、素材産業から機械・エレクトロニクスなど先端産業まで広範な生産を支えている。このため過剰な負担はソーダ、ガス産業の収益力の悪化にとどまらず、原材料のコストアップによる需要業界の海外生産移管を加速することになりかねない。
 負担軽減分の補てん原資を含めた買取価格に関する詳細な制度設計はこれからだ。原発を含めたエネルギー政策、地球温暖化対策、国内生産を可能にする競争力維持のための産業政策など総合的視点から再生エネルギーの位置付け、普及に向けた取り組みが必要になる。


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