LCA充実へ一石を投じる2報告書
ものづくりでは大量のエネルギーを消費してCO2を排出する。加えて原料の採取・輸送、製品の流通、消費、廃棄など製品のライフサイクルにおいてもCO2が発生、環境に負荷を与える。化学産業はエネルギー消費・CO2発生の多い産業に分類されるが、ライフサイクル全体でみるとCO2削減に貢献していると主張してきた。この主張は必ずしも正当に受け入れられていないが、その一因はライフサイクルを通じた定量的な分析・評価(LCA)の遅れだ。この課題に一石を投じる提言・報告書が日本学術会議、日本化学工業協会から発表された。
1992年の地球環境サミットの契機に、LCA手法に基づいて環境負荷を定量的に評価する取り組みが世界的に注目され、日本でも開発が始まった。最近では主に消費財を対象にするカーボンフットプリント制度が導入されたが、データを作成する際に推定値を用いることあって恣意的になりがちという意見も多く、定量的かつ信頼性の高いLCA構築は容易でない。
学術会議は「資源循環型ものづくりを実現するための学術的指針―地球温暖化対策を主対象に」を提言した。ライフサイクルの各工程で使用するエネルギー削減には素材利用を最小化し、かつその再生の最大化することが「素材とエネルギーを含めた資源循環型ものづくり」の原則と強調した。そして、製品設計にコンバージングテクノロジー、事前評価には拡張LCA、製造にはファクトリーフィジックスを適用すべきとした。
日化協は「国内における化学製品のライフサイクル評価報告書―温室効果ガス削減に向けた新たな視点」を発表した。09年に国際化学工業協会協議会(ICCA)が試算した化学製品を製造する過程で排出されるCO2と、製造された化学製品の使用によって削減されるCO2の比較を実証的に示すことが狙いである。
具体的には20年時点で普及が予想される8製品を選び、競合製品と比較した。例えば、航空機では炭素繊維を用いて従来と同じ性能・安全性を保ちつつ軽量化すると、原料・製造組立工程で122万トンのCO2削減が可能とした。このほか太陽光発電など再生可能エネ、LEDや住宅用断熱材など省エネ関連で定量的削減効果を示した。
学術会議、日化協の報告に多くの議論が巻き起こることを期待したい。成長戦略にグリーンイノベーションの重要性が高まっているが、その推進は部分最適ではなく全体最適を視野に入れ、科学的、定量的データに基づいて実行すべきだ。政府にはLCAの役割りを再認識して積極的支援を望みたい。