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2011年07月25日 前へ 前へ次へ 次へ

危機に強い経済を強調した経財白書

 2008年の世界同時不況からようやく立ち直り、新たな成長戦略へ踏み出した段階で発生した東日本大震災。日本経済は新たな試練に直面したが、被災した設備の修復、サプライチェーンの立て直しなど復旧に向けた動きは着実に進展している。しかし電力供給の制約、原発事故収束の長期化、不安定な雇用環境、資源高の影響、そして海外経済の不透明感など先行きのリスク、不安が広がっている。財政・社会保障の持続可能性も一向に改善されていない。
 このように山積する日本経済の課題にいかに対応するか、この視点でまとめたのが内閣府が22日に公表した11年度版経済財政白書だ。副題を「日本経済の本質的な力を高める」として、"危機に強い経済への転換"実現のために、FTA(自由貿易協定)などを通じたグローバル化とイノベーションの加速を強調した。
 これまで自然災害に遭遇した世界各国の事例に基づいて、中長期的な成長の鍵は、労働者のスキルなどの人的資本の充実とともに、ノウハウ、特許、ソフトウエアなど無形資産への投資が重要とした。これは世界同時不況、東日本大震災で大きな打撃を受けた日本経済にとっても不可欠と強調した。
 グローバル展開を進めるうえで重要性を高める無形資産のなかで、日本は自然科学分野の研究開発、資源開発権、著作権およびライセンスなど「革新的資産」が相対的に高いことが特徴である。ただフロー、ストックのいずれも頭打ち傾向にあり、わが国が優位を保ってきた研究開発に関しても効率性に課題を残すという。
 今世紀になって、わが国の実質ベース輸出は欧米を上回るものの、名目ベースでは相対的に低めに推移しており、貿易開放度も経済規模を考えると低いと指摘する。対内直接投資残高は増加しているものの国際的には低水準で、外国人労働者数の割合は低いのが実態だ。一方、FTAの締結は貿易量のプラス効果があり、企業のグローバル化は海外需要の獲得やガバナンス改善による付加価値を押し上げ、生産性上昇にも寄与すると分析している。しかしながら、わが国の取り組みが遅れていることは否定できない。
 東日本大震災は衝撃的だったが、この4カ月余りの被災地および産業界の取り組みによって回復に向けた足取りは着実である。一方で、世界同時不況でより鮮明になった日本経済の構造的課題への挑戦は始まったばかりである。日本企業はグローバル展開とイノベーション創出を軸に動き出しているが、これを後押しする政策の重要性は論を待たないだろう。


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