新たな可能性を示す塩ビコンテスト
化学産業は研究開発や製造技術の開発に多くの経営資源を投入してきた。化学産業のなかでも化粧品やトイレタリー業界はデザインなど意匠性を重視するが、素材系製品ではほとんど無視されてきた。「いいものを安く生産する」から踏み出して、化学製品の持っている素材力と、デザインなどソフトを組み合わせることで新たな世界が広がるのではないか。そういう期待を抱かせたのが「塩ビものづくりコンテスト」である。
塩化ビニル樹脂は汎用プラスチックのなかで最も長い歴史を持っている。第2次世界大戦中に生産が始まり、石油化学工業の国産化に先駆けて量産化が行われた。しかし、慢性的な過当競争体質に加えて、ダイオキシン問題など環境安全の逆風を受けて、塩ビ事業から撤退する企業も続出した。
塩ビはパイプに代表される硬質製品から、フィルムやシートなどの軟質製品まで多様性が大きな特徴で、可塑剤や添加剤を組み合わせることで応用分野はさらに広がる。ただ、これまで川上の塩ビメーカーが製品開発で主導的な役割りを果たすことは少なく、加工メーカー任せというのが実態だった。
住宅資材や工業用が大半を占める硬質製品では意匠性を発揮する余地は限られているが、軟質製品の持つ柔軟性のみならず加工性、印刷性、透明性などの特性を生かした商品開発の可能性を探ろうとして始まったのが塩ビものづくりコンテストだ。塩ビ工業・環境協会、日本ビニル工業会、日本ビニール商業連合会、東日本・中日本・西日本プラスチック製品加工協同組合という塩ビ軟質製品のサプライチェーンの関係団体が連携して昨年秋にキックオフした。
このほど、その第1回の審査結果が発表された。残念ながら大賞は該当者なしになったものの、工業デザイナーと高校生の二人の若い女性が制作した作品が準大賞に選ばれた。今回の応募作品は塩ビの可能性を十分に表現しきれなかったというのが、大賞の該当者なしの理由のようだが、準大賞の作品も魅力的に仕上がっていた。
今回の塩ビものづくりコンテストは、他の化学素材にも広げる価値がある。高品質・低コストに向けた技術開発は得意とするものの、魅力ある商品づくりの努力を怠りがちな化学業界に一石を投じることになるはずだ。もちろん素材メーカーの力は限られており、加工・最終商品に携わる企業、デザイナーなどとの連携、総合力が必要になろう。塩ビものづくりコンテストは今回の成果によって、2回目の開催を固めたようだが、同様な取り組みは他の化学素材でも始まることを期待したい。