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2011年07月15日 前へ 前へ次へ 次へ

てこ入れが必要な医薬品の流通改革

 医療用医薬品の流通にかかわる諸問題の解決は、永遠の課題なのだろうか。卸価格が決着しないまま製品が医薬品卸から医療機関・調剤薬局に流通する「未妥結仮納入」の是正は、厚生労働省医政局長の私的懇談会「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」(流改懇)が2007年9月に策定した緊急提言を受け、08年度に大きな成果を上げた。しかし10年度は再び後退してしまった。強制力のない提言の限界が露呈したといえる。
 厚生労働省の調査データによると、2年ごとに実施される薬価改定で改定半年後に当たる9月末の納入価妥結率は06年度が54%、08年度が71%、そして10年度は47%だった。医療機関の種類別にみると、済生会、労働者健康福祉機構、日赤、厚生連など、全国に病院がある公的組織の妥結率の低さが目立つ。バイイング・パワーの強い医療機関は、卸にとって大口顧客であると同時に手ごわい交渉相手でもある。
 先月末、約1年ぶりに開催された第17回流改懇では、医療機関側の委員から「病院では最近、値切りの専門家が交渉をしている。卸もそういう人を出してほしい」との発言が飛び出した。これに対して嶋口光輝座長(医療科学研究所所長)は、「病院も経営が厳しくなっており、外部のコンサルタント、いわゆるプロが交渉をするとなると卸も大変」と語った。
 医療用医薬品の薬価は国が決めるが、流通には市場原理が働く。少しでも安く仕入れて薬価差益を得たいというのは当然だろう。しかし市場実勢価格の下落は薬価の引き下げにつながり、メーカーや卸の経営を圧迫する。一方で、薬価の下落は患者や医療経済にはプラスになる。アダム・スミスが説いた「神の見えざる手」である。
 10年度は特定要件を満たす新薬の薬価を維持する新制度が試行導入された。複数品目を束ねて交渉する総価取引を是正し、医薬品の価値に見合った単品単価取引を推進していく必要性が増しただけに、矢面に立つ卸は難しい交渉を余儀なくされた。価格決着が長引いたのも仕方がないだろう。
 第17回流改懇で卸側は、単品単価取引の推進、未妥結仮納入の解消に対する公的な支援や枠組みなどを要望した。緊急提言の内容を実現していくには、当事者の意識改革だけでは難しいからである。前回の流改懇でテーマに上った早期妥結インセンティブに関する議論の場を設けることも求めた。
 流通改善は積年の課題である。緊急提言で盛り上がった改革機運を消失させることなく、てこ入れの検討と実行を着実に前進させていく必要がある。


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