喫緊の課題と認識すべき空洞化対策
日本経済にとって、産業空洞化問題が大きなリスクとして浮上してきた。東日本大震災で露呈したサプライチェーンの寸断は、供給側の懸命な努力で修復されつつあるが、中期的なチェーンの"強靭化"の手立ては見えないままだ。このなかで、復旧・復興と並行して進められるべき規制改革や法人税引き下げ、成長分野の国内投資支援などの経済対策は手が付けられていない。混乱を続ける政府の責任はあまりにも重い。
今回の大震災では、これまで精緻に組み立てられてきた日本型の素材・部材供給網のリスクが明らかになった。3万点に近い部品が必要とされる自動車産業が話題になったが、中核部材の供給にまで効率化の仕組みが広がっていたことは意外性をもって受け止められた。
今後、競争力を維持しながら、サプライチェーンの分散化や複線化、災害時の代替供給、そして柔軟性を有した材料仕様が進むかが焦点となるが、その実現は容易ではない。
この一方で、チェーンの断絶が表面化した際、「これからは韓国や中国などの素材・部材メーカーが活躍する場が増える」との声が一気に高まった。事実、電子関連を中心に日本を含めた世界の需要家から、韓国や台湾などの電子部品・材料企業への引き合いが殺到したようだ。自動車の一部の部材でも同様の動きが見られたという。
今回は供給危機という事態があったとはいえ「機能とコスト」が折り合えば、サプライチェーンの構造変化が起こることが明らかになった。この間、日本の組み立て産業はアジア勢を中心とした海外企業に激しく追い上げられ、一部はすでに先行されているのは周知の事実だ。素材・部材側は事業継続計画(BCP)の練り直しも含めた戦略的な対応を急ぐ必要があろう。
しかし、より深刻な問題は震災前から日本経済が抱えていた多くの課題が手つかずのままになっていることである。昨年6月、政府がまとめた新成長戦略は「失われた20年」の問題点と課題を検証し、日本経済再生への包括的なビジョンと具体的な方策を示したはずだった。しかし、法人税率引き下げやTPPなどの経済連携、各種規制改革など国際的な競争条件のイコールフッティングを目指す施策は、大震災の混乱に巻き込まれたままに放置されている。
また、原発事故収束の長期化が避けられないなかで、定期検査を終えた原発の再稼働に赤信号が灯った。全電力供給の30%を占める原発の稼働停止は、日本経済に直接的な打撃を与えるのは必至だ。これ以上"危険なシナリオ"に付き合うことはできない。