明日への対話 連載8 持続的ものづくりと化学産業
橘川 選択と集中についてお伺いします。ICIやヘキストなど欧州の一部企業は株主のために選択と集中を実施した。しかし、だんだんそれ自体が自己目的化し、ついにある意味で企業自体が消滅してしまった。
小林 ええ、切り売りしても自分自身のバリューを上げられず、株主を喜ばすためについには分散した。それも1つの見方でしょう。
橘川 別の見方もありますか。
小林 これは聞いた話ですが、ヘキストの場合は、むしろ事業をどんどん取り入れていった。けれど、結局それをマネージするチェアマンなり経営者がいなくなったんだと。一方で、BASFがなぜ成功しているのか、会長を退任されるユルゲン・ハンブレヒトさんに聞いたんです。彼がいったのは、やっぱり正に選択と集中をしたんだと。僕からみると、彼に能力があったから成功したんです。
橘川 なるほど。
小林 結局、最後はネジメントだと思うんです。ものづくりに対する強い意志を持ったマネジメントがある会社は強い。
橘川 BASFの場合、ザ・ケミカルカンパニーと「THE」を付けてますよね。
小林 あのこだわりが凄いですね。一方でデュポンはサイエンスという言葉しか使わない。ケミカルとはポリューションの別名だからと、絶対ケミカルっていわない。でも、BASFのハンブレヒトさんはケミストリーにこだわってますよね。
橘川 そういう意味では、日本の会社にちょっと企業文化が似ているんじゃないかなと。
小林 ええ。日本だって信越化学の金川さんみたいな強い人もいる。70代、80代で頑張っている社長が多いですね。
橘川 化学は製品が単純じゃないし、ポートフォーリオを常に考えなきゃいけない。サプライチェーンのなかの位置取りというのも大変でしょうから、まさにマネジメントの一番難しい業界といえるかもしれませんね。
小林 誤解されるのを覚悟のうえでいうとしたら、組立産業はクオリティの高い部品を安く買ってきて、そこに付加価値をつけて高く売ればいい。一方、化学は全部合わせると3万、4万と商品がある。それをどうマネジメントするかというのは、他の産業とはちょっと違います。難しいかどうかは別として。そのうえ医薬品もあるわけですからね。
橘川 経団連の地球温暖化防止の自主目標作りでも、化学は他産業と比べ本当に難しいですね。実は化学のところの責任者を仰せつかっていますが、他の産業は製品が簡単だから目標を立てていけばいいんですけど、化学は品目がたくさんありすぎます。
(つづく)
【写真説明】
事業の選択と集中にはものづくりに対する強い意志が求められる(BASFのルートヴィッヒスハーフェン工場)