もの・ことづくりを提案した同友会
「技術で勝っても、事業で負ける」。リーマンショックを契機にした世界経済の構造変化のなかで、日本企業の苦悩する姿を端的に示した。この課題に経済同友会は「世界でビジネスに勝つ『もの・ことづくり』を目指して」とする提言を行った。強調したのは多様化するグローバル市場でのマーケット側からの視点によるビジネスづくり=ことづくりだ。この浸透には企業組織の見直しや人材育成などが不可欠になるが、わが国製造業の底力が問われる。
提言を行った「もの・ことづくり委員会」(委員長・長島徹帝人会長)は昨年4月に発足した。自動車業界における品質問題の顕在化や、世界を相手にビジネスを展開する韓国系電機企業の後塵を拝したことなどが背景にある。さらに急速に経済発展を続ける新興国市場でビジネスチャンスを十分に獲得できなかったという反省もあり、日本が得意とするものづくりの優位性が相対的に低下しているという危機感が広がった。
同友会ではことづくりを、マーケット側から「顧客が本当に求めている商品とは何か、その商品を使ってやってみたいことは何か」と定義して、従来の製造業視点でのものづくりの対極に置いた。高品質・高機能を追求してきた日本流ものづくりが、新興国市場とミスマッチを起こしている。摺り合わせや高い安全・安心技術を武器にした日本のものづくり技術を生かしながら、成長を続ける新興国市場で、いかに存在感を発揮するか、その方向を示した。
この実践を推進するのが人材育成や組織改革という。人材は俯瞰的視点で価値提供ストーリーを構築できる「プロデューサー人材」と、ストーリーを理解してものづくりに具現化できる「ディレクター人材」の相乗効果が必要と指摘した。このほか、社内の雰囲気や伝統に縛られて異分子排除の風潮や組織の根絶も求めた。
わが国製造業が世界の変化に対応できていないことは経済産業省なども問題にしてきた。昨年6月に策定した「産業構造ビジョン2010」では、今後の戦略分野を示すとともに、課題解決の方策を示した。これを下敷きに新成長戦略を閣議決定して、新たな経済発展に向けて動き出した。しかし東日本大震災が発生、官民ともこの対応に追われ、サプライチェーン再構築という課題を迫られている。
同友会では「もの・ことづくり」戦略の深掘りを進めるとともに、震災後の最適なサプライチェーンマネジメントに関しても1年間をかけて議論、提案する方針だ。民間の創意に基づく製造業の復活シナリオと実現を期待したい。