「明日への対話」 連載6 持続的ものづくりと化学産業
橘川 化学会社にはホールディング制が向いているということですか。
小林 あれもこれも一緒にして、やたら効率を良くするという方向が本当に正しいのか。例えば自動車はアウトカムが4つの車輪に1つのエンジンと、ものすごくクリアす。ビール会社は極端なことをいえばビールを作る会社。化学というのは何万という商品群をどういうかたちでオーケストレートするかです。だからホールディング方式というのは1つの解かなと。単品事業だと、その事業が調子悪くなると全体として苦しくなる。やはり大きさ、総合力というのは全体の収益をうまく調整する機能があり得る。
橘川 ホールディング制には固有の困難があるかと思いますが、そこはいかがですか。

小林 「この指とまれ方式」と僕はいっているんですが、企業統合のなかで、いきなりマージ(合併)するっていうのは、どっちが社長になるんだとか、企業の名前、ブランドが消えちゃうとかという問題があります。今回、三菱レイヨンがグループに入りましたが、ホールディング制では会社の名前は残るし独立できる。ただ、上場だけはできない。その程度の条件であれば、この指とまれといったらとまってくれる人がいる。

橘川 企業統合にとって都合が良いことが多いと。
小林 ホールディングの中の事業交換も容易です。例えばエンジニアリングは三菱化学に全部持ってきて、水関連の事業は全部三菱レイヨンに持っていくとか。こういった料理がやりやすいんですよ。アナリスト的なところからいうと、シナジー効果は何ですかとか、いきなり来るじゃないですか。
橘川 来ますね。われわれもちょっとその傾向があります。
小林 例えばBASFはチバを買収し、ダウはローム&ハースを買収した。それで、すぐに工場も従業員も半分に減らしました。ドイツは労働政策上リストラは難しいといいながらそれができるんですよね。日本ではまずもってできません。独禁法以前に、そういうスレシュホールド(敷居)、障壁があるのでマージが進まないんじゃないかなと思うんです。
橘川 ただ、ホールディング制は事前調査では評価し切れないリスクが隠れていたりする。
小林 ですからホールディング会社は、基本は安全・コンプライアンス・内部統制と、ポートフォーリオ・マネジメントの2つが中心となります。それと次の戦略的なところ。そのなかでも一番難しいのは、安全をどう担保するかです。火災ですとかコンプライアンス問題など、内部統制的なものをどう機能させるか。そう簡単じゃありませんが、そこに集中してやることになると思います。
(つづく)
【写真説明】 左・小林社長 右・橘川教授