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2011年06月22日 前へ 前へ次へ 次へ

復興と発展に資する科学技術計画を

 2011-15年度の第4期科学技術基本計画の見直し作業が大詰めを迎えている。5月2日に政府の総合科学技術会議は「当面の科学技術政策の運営」を公表した。東日本大震災からの復興と、世界をリードする日本の成長力を両立させる科学技術政策のあり方は、これまで3回の計画策定以上に難しい課題が山積する一方で、重要性を帯びている。バランスを欠いて科学技術の発展を阻害する5年間にならぬよう、しっかりとした戦略と舵取りを求めたい。
 基本計画は、昨年12月にまとまった内容に沿って3月に閣議決定の予定だったが、震災の発生で延期され、当初計画案から優先課題の修正を迫られた。政府では8月までに見直しを終え全体計画を固める予定だ。
 これに基づいて6月中旬、パブリックコメントの募集を開始した。科学技術に関する基本政策の見直し案では、まず震災からの復興、再生が示されている。科学技術が担うべき役割りとして、開発成果を被災地の抱える災害対策などの問題解決、さらに国全体に有効な防災対策への貢献を強調している。
 成長の柱である環境・エネルギー(グリーン)と医療・介護・健康(ライフ)の2大イノベーションを基本計画で深掘りさせる。被災地の産業復興・再生は、第一次産業の安全性の向上、先端材料や部品のサプライチェーン再構築、機器の高度化、安定供給体制に役立つ研究開発推進を挙げている。被災した住民の心をケアする心理学や精神医学に基づく診断・治療などの研究も強化していくという。
 並行して12年度の科学・技術重要施策アクションプランも固まってきた。その青写真として、被災地域に特区制度を活用して大学、公的研究機関、産業界の連携を促して、再生可能エネルギーの開発と普及促進をはじめ、医療・介護、情報通信、先端材料、環境の各領域の研究機関を創設して、官民の研究機関が集積した一大研究拠点形成に取り組む。大学の知財活用による先端産業事業化構想も一体的に推進できる場として形成することも考えている。
 ただ短期間に研究機関の集積を整備するとなると、国内研究者の再配置に加え、海外から優秀な人材を招聘する必要もある。リーダーシップを持った研究者が被災地で研究に携わることは容易ではないが、積極的な働きかけを期待したい。一方で地域に密着した農業関連の研究機関の機能縮小も懸念される。
 最先端の建屋・設備の投資ににとどまらず、研究開発者の使命感を高めるモチベーション支援、優遇措置・資金配分などを多角的に進め、掲げた青写真を実現してもらいたい。


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