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2011年06月21日 前へ 前へ次へ 次へ

化学の供給網安定化に浮上した課題

 東日本大震災によって被災した生産、物流設備の復旧は急ピッチに進み、寸断されたサプライチェーン(供給網)は予想以上の速さで修復されている。その一翼を担う化学産業も例外ではないが、震災を契機にこれまでほとんど話題にならなかった化学製品の供給が停止して、自動車生産などに支障を与える事態が発生した。今回の経験を踏まえて、取引先企業から災害などの緊急事態を想定した対応策の提示が要求されそうだが、その際に独占禁止法との調整、顧客企業の理解など課題も多い。
 震災によるサプライチェーンの寸断は、海外の自動車や電機関連産業の生産にも影響を与えた。日本企業の高い技術開発力を背景にした部品や部材は世界各国に供給されているが、これらの生産を支えているのが特殊材料やプロセス用薬剤だ。このため国内のみならず海外からも関心を集め、一部の海外企業からは部材の現地生産を取引条件にするケースも出ている。
 国内市場の成長が期待できない以上、化学産業のグローバルな事業展開は避けられないが、リスクへの対応も迫られる。日本の化学企業は選択と集中に取り組み、収益力を高めたものの、BASFやダウ・ケミカルなど世界の化学メジャーに比較すると利益率は劣る。最近では、新興国や産油国の化学企業も巨大化しており、対抗するには企業合併や事業提携による規模拡大の必要性が改めて指摘されている。この変化に応じた競争政策が求められ、公正取引委員会は事前相談の廃止などで迅速性や透明性の改善に踏み切る。
 また、公取委は震災直後の供給混乱に対処して独禁法の柔軟運用を打ち出したが、産業界からは災害などの発生を想定した生産受委託、需要が縮小傾向ある製品の合理化策などで独禁法の制約が予想されるとしてガイドラインの明記を求め、公取委も改善の方向を示した。着実な実行が求めたい。
 また少量使用している添加剤の供給制約によって、要求される品質を確保できないこともあった。この解決は、化学企業の知見を生かして添加剤を切り替えることで同一水準の維持は可能なことも多く、事前に顧客の認証試験を得ないで変更を可能とする契約を締結するなど企業間の努力も必要になろう。
 今後、化学産業に影響を与えそうなのは、自動車産業が検討を始めた部品共通化がある。川上・川中・川下企業の「摺り合わせ」がわが国の自動車産業の国際競争力に貢献したが、樹脂のグレード共通化なども含めてリスクとコスト低減の動きは避けられないだろう。ユーザー企業と相互理解を深めながら方向性を探ることを望みたい。


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