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2011年06月20日 前へ 前へ次へ 次へ

植物工場の普及に不可欠な競争原理

 植物工場の普及に向けた取り組みが本格化してきた。季節や天候に左右されず高品質の収穫物を大量に安定供給、消費者の安全志向への対応、消費地に近い都市部でも生産可能などの利点から多くの企業が注目しているが、生産性やコスト面などの課題が普及の足かせとなっている。このなかで農林水産省の「モデルハウス型植物工場実証・展示・研修事業」が3カ年計画の最終年度を迎え、具体的な実証段階に入っている。
 同事業は、生産現場に提示できる植物工場の実用化モデル確立に向け、民間事業者グループによる技術の実証・展示・研修を行う拠点施設を整備するもの。2009年度から3カ年計画で進められている。莫大な施設の設置・運営コスト、モデル施設が存在しない、特化した技術を持つ人材の不足-という植物工場を取り巻く現状に対して、生産コスト削減、最新技術のモデル展示による植物工場普及・推進、研修による技術普及や人材育成といった効果を狙っている。目標として11年度までに、植物工場における生産コスト3割削減を掲げている。
 同事業には農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、三重県、千葉大学、愛媛大学、大阪府立大学が採択され、全国で6地区3グループの植物工場拠点が整備されている。
 そのうち「トマト、レタスの高単収・低コスト生産技術実証」グループの千葉大学は6月14日、柏の葉キャンパス(千葉県柏市)において植物工場拠点の開所式を開いた。同拠点は9つのコンソーシアムに計60社が参加する大規模な事業。太陽光利用型5棟(トマト)、完全人工光型2棟(レタス)のほか、研修施設や選果・育苗施設などの共用施設が今年3月末に完成している。
 現状の課題として、例えばトマトの場合、養液栽培の反収はオランダ60トンに対して日本は20トンであり、生産性向上の余地は大きい。また、日本の民生用ヒートポンプの暖房効率は世界一を誇るが、園芸分野への活用は不十分といえる。完全人工光型ではLEDが採用されているものの、水道などを含めたランニングコストが多大といった課題がある。同拠点ではこれらを解消すべく実証し、成果を広く公開していく。
 9コンソーシアムで構成される千葉大拠点は、各コンソーシアム単位での競争・協調を前面に出して、生産技術やコスト低減の成果を期待している。日本の農業再生にもつながる植物工場の普及には、事業採算性の確保が大前提だ。それには競争原理をともなった事業者間の切磋琢磨なくしては、今後の発展もないといえるだろう。


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