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2011年06月16日 前へ 前へ次へ 次へ

議論のないまま先送りされたTPP

 〈えがすか、百姓にゃ、百の能力が要求されんのだぞ〉。東北地方の寒村が日本から独立する井上ひさしの小説「吉里吉里人」で農業こそ知恵が求められると、東北弁で強調するシーンだ▼井上さんは日本の農業に対して数多く発言してきた。いま焦点になっている環太平洋経済連携協定(TPP)には、多分反対しただろうが、小説では〈片手間仕事で成り立って居るのは、政府の保護が有るからっしゃ。農協が先頭さ立って圧力ばかげる〉と、兼業農家やJA、そして政治家も批判した。40年近く前に執筆されたが、農業を取り巻く課題は変わっていないと感じる▼菅内閣は"平成の開国"と称してTPPへの参加を打ち出した。当初から激しい反対はあったが、東日本大震災による農業被害に配慮して結論を先送りした。それ以上に残念なことは、今回も日本農業の将来のあり方も含めてTPP推進派、反対派が一方的に自説を主張するのみで、建設的議論が少なかったことだ▼吉里吉里人は、日本政府に愛想をつかして独立宣言から始まる。鳩山前首相の退陣の引き金になった米軍基地問題は、解決の糸口を見いだせず混迷を続けている▼原発と並ぶ「迷惑施設」問題にどう対処するか。このまま沖縄県民のみに犠牲を強いると、沖縄独立さえも現実の問題になりかねない。


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