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2014年05月15日 前へ 前へ次へ 次へ

人と話題 日本触媒・上田賢一氏

光学フィルム用アクリルポリマー開発・工業化で日本化学会「化学技術賞」
ニーズに応じた柔軟さ大事

 光学フィルムとして大型テレビやスマートフォン、タブレット端末など液晶ディスプレイの高性能化に大きく貢献するアクリルポリマー。この実用化に道を付けたのが日本触媒・企画開発本部企画部グループリーダーの上田賢一(写真)氏らの研究開発チームだ。新たにラクトン環含有アクリルポリマーを開発・工業化させ、日本化学会の2013年度「化学技術賞」を受賞した。

 ラクトン環含有アクリルポリマー「アクリビュア」は、α-ヒドロキシメチルアクリレート(RHMA)とメタクリル酸メチル(MMA)とを共重合し、分子内エステル交換反応によって主鎖にラクトン環を有する構造を持つ。アクリルポリマー特有の透明性や光学特性はそのままに、欠点とされた耐湿熱性もクリアする。樹脂設計も自由度が大きく、共重合組成や各種材料とのブレンドによって耐熱性や耐久性、光学特性の調整が可能で、市場ニーズに応え需要も拡大が予想されている。
 アクリル酸メーカーとして誘導品研究は重要で、「RHMAモノマーはその一つ。効率の良い製法と用途開拓が端緒だった」と振り返る。担当したのが現在、情報・機能性材料研究所長を務める中川浩一氏で、触媒技術などを駆使し課題をクリアした。「当初は医薬品などの中間体を想定」したが、条件面で折り合いがつかなかった。その後ポリマーとして用途開発に舵を切るなか、光学フィルムニーズに出合った。
 当時、スマートフォンやタブレットなど情報端末の液晶向け光学フィルムの普及拡大に対し、トリアセチルセルロース(TAC)では耐熱性などに限界があった。元来、アクリルポリマー骨格の主鎖に環構造を導入すれば高い透明性、光学特性を維持したまま耐熱性を付与できることは知られていた。上田氏らはポリマー開発を進める一方、同社の重点プロジェクトに選定、試行錯誤を繰り返し工業化を経てアクリビュアは日の目をみる。「採用時はアクリルポリマーとしての透明性、光学特性が評価されたが、その後、薄型化ニーズに最適な特徴が再評価された」こともあり、後発ポリマーの追随を許さない。
 アクリビュアは他の用途開発も考えると今の生産能力の大幅増が必要とも。「耐溶剤性に優れ塗装代替できるフィルムなど」可能性は大きいという。自身は次の研究に取り組んでおり、「今後も特徴ある技術で世の中にない材料を開発していく」と意気込む。「一時は研究者2人という時期もあったが、いまは20人近い。成功するにはまず技術の完成度を高め、そのうえで広い視野を持ち、市場ニーズの変化に対応できる柔軟さが必要。とにかく、あきらめてはいけない」と若手研究者にエールを送る。
(野開勉)


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