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2014年04月24日 前へ 前へ次へ 次へ

人と話題 三菱化学執行役員フェロー 瀬戸山亨氏

三菱化学科学技術研究センターに「瀬戸山研究室」を今月設置
「日本が勝つ」仕組をつくる

 「勝ち投手の権利はいらんから、今日も明日も先発をやらせてほしい」三菱化学の瀬戸山亨執行役員フェロー(写真左)は、経営トップにこう直訴する。入社後4年で芳香族アルデヒドの新製造プロセスを完成させ、世界の先頭を走る感覚を知った。その後もさまざまな触媒反応の基礎検討から工業化に携わり、現在では、企業の枠を超えて人工光合成プロセス研究など国家プロジェクトも率い、日本の化学産業の方向性を指し示す。

 子会社の三菱化学科学技術研究センター(神奈川県)に名前を冠した「瀬戸山研究室」が今月設置された。取り組む研究課題は、5〜10年先に事業化を目論むテーマ。「会社は選択と集中を求めるが、課題を絞る前にいいネタがなければならない。研究成果の成功確率を高めるには数と知恵が必要で、民間だけでは追いつかない。大学との共同研究の枠組みを積極的に活用したい」。
 これまで東京大学や東京工業大学など近隣大学と共同研究する枠組みを自ら作り上げてきた。東京・丸の内の本社と研究所、各大学を循環する研究スタイルは「下駄履き共同研究」と呼ばれた。「大学の研究案件には有望なテーマが多いが、海外企業に事業化を奪われることも多かった」と悔しい思いもした。韓国や中国は先端技術でも日本を猛追する。瀬戸山氏は「化学分野の研究文化は日本が先を行く。いまだったら勝ち逃げできる。その仕組みをきっちり作っておきたい」と話す。
 瀬戸山研究室が構想しているのは、国の技術戦略と三菱化学の研究方針をシンクロさせる研究開発だ。国が掲げる「グリーンサスティナブルケミストリー(GSC)」「元素戦略」「分子技術」は、同社ではそれぞれ「原料多様化触媒プロセス」「機能性無機材料」「有機材料設計」に置き換えられる。大学の研究促進策を充実させる文部科学省や経済産業省の支援の枠組みも積極的に活用し、産学官連携で実用化を加速させることが合理的とも語る。「サイエンティフィックに差異化できた素材、プロセスを年に数件提案し、平均3年で評価・選択する仕組みを作る」ことを目指す。
 これまでに大学との共同研究を通じ、エチレンから直接プロピレンを作る触媒「ETP」やゼオライト分離膜といった世界でも断トツの技術を開発した。例えばETPを世界中のエチレンクラッカーが導入すれば二酸化炭素の発生を6億?減らせ、分離膜は環境・エネルギー分野でブレークスルーのネタが豊富と語る。瀬戸山研究室には、こうした事業化目前のテーマを着実に成果に結びつけることも求められている。
 研究室は研究者18人でスタートした。「会社の仕事を自身の能力の8割でこなせるようにし、残りの2割を新たな研究に打ち込める余裕がなければならない」と部下に発破をかける。グループ内の研究部門や製造部門、大学など「あちこちに行って働いて来い」と下駄履き研究を奨め、先発投手の育成にも力を入れる。(三枝寿一)



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