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水力発電・再評価進める化学各社
(上)
化学メーカーの間で水力発電への注目が高まっている。昭和電工は、このほど大町事業所(長野県)に電力を供給する青木発電所で今秋にも設備更新を行う方針を決定。旭化成も宮崎県でリニューアルの検討に入った。一方、電気化学工業やJNCでは水力発電所新設も議論する。電力料金の値上げが相次ぐなか、再評価進む先人たちの"遺産"の今を追う。
(吉水暁)
「3〜7%の能力増を見込んでいる」。昭和電工大町事業所の竹内康典動力課長は、早ければ今秋にも行う設備更新計画についてこう語る。能力9800キロワットの同発電所にある2号機の軸受けや水車の更新を計画し、この秋から来春にかけての置き換えを予定する。老朽化対策に加え、取水量が大きく増やせないなか、新型機器の導入により、発電能力アップへとつなげることを狙う。
クラッカーを持つ大分コンビナート(大分県)やアンモニアなどの拠点である川崎事業所(神奈川県)といったイメージの強い昭和電工だが、実は内陸部にもたくさんの工場を抱えている。その多くは水力の自家発電所とセットで、大町以外にも塩尻(長野県)、秩父(埼玉県)、東長原(福島県)の各事業所にス力自家発電を擁する。人造黒鉛電極を生産する大町事業所は、「電力多消費工場の典型」(石原幹司事業所長)。青木発電所も含めた周辺3カ所の水力発電所抜きにしては、大町事業所の安定操業や競争力強化はあり得ないといっても決して過言ではない。
宮崎県の延岡・日向地区でポリアミド66樹脂やキュプラ繊維などを生産する旭化成も、同地区に電力を供給する水力発電設備の更新に向け動いている。同県北部の五ヶ瀬川水系に合計9基の流れ込み発電所を構え、その総能力は5万7000キロワット。旭化成グループでも有数の電力多消費拠点の操業を支える重要な存在となっている。
こうしたなか、同社は更新時期を迎えた発電所から、順次、水車などのリニューアルを行いたいとしている。新たな設備を取り入れることで出力効率の向上を図り、余剰時の売電拡大も視野に入れる。
各社が水力発電所の見直しを進める背景にあるのは、震災を契機に国内電力事情が様変わりしたことだ。原子力発電所の停止や火力発電所で使う液化天然ガス(LNG)の高騰。電力を多く消費する製品を抱える工場は厳しい状況に追いやられている。運用コストの少ない水力発電所を有する工場では、その潜在能力を最大限に発揮しようとするのは自然な流れだといえる。
とくにダムを造らない流れ込み式発電所の場合は、ダム式と比べ、各種の費用負担も少ない。長い所では90年近く使われ続けている設備も多いため、「設備を最新鋭の機器に置き換えるだけでも効率が上がる」(竹内課長)という。再生可能エネルギーへの追い風を生かして、水力発電設備リニューアルの取り組みは広がりをますます見せそうだ。
(下)
設備更新に止まらず、新たな水力発電の電源を得ようとする取り組みも化学各社では盛んとなってきている。国内でも有数の水力発電を信越地区で展開する電気化学工業はその代表格だ。青海工場(新潟県)で使う電力の3割を、合弁も含め15カ所の水力自家発電に頼る。技術総括の渡辺均代表取締役専務執行役員は「だからこそカーバイド事業を続けることが可能だ」と強調する。
そんな電気化学工業では、16カ所目となる水力発電所新設に向けた事業化調査(FS)を進めている。電力価格の中長期的な上昇が避けられないなか、石灰石からカーバイドを経て、主力のクロロプレンゴム(CR)にいたるチェーンを同工場で維持・発展していくには、安価な電源の確保は最重要課題だ。取水量の拡大や設備の入れ替えによる増強以外にも手を打つ必要がある。
電気化学工業は、こうした情勢を総合し、約50年ぶりとなる水力発電所の新設を打ち出した。出力は5000〜6000キロワットを想定。費用対効果や初期費用を勘案し、流れ込み式を有力視。「次の電気化学工業の百年を支えるインフラに対する投資」(紳介社長)との位置付けで、完成は2017年頃を見込む。足下では11万キロワットとなる水力発電の能力を、これら新増設を行うことで、1割程度上乗せできると同社では試算する。
「自前の発電設備を持つことによって、青海の事業基盤をさらに強固なものにしたい」と同社の関係者。今後、建設予定地における環境調査結果などを踏まえ、詳細を詰めていく。
同じ新設ではあるものの、JNCの場合、水力発電の活用をもう一歩進め、"攻め"の姿勢を貫く。同社は熊本、宮崎、鹿児島の3県で計13カ所の水力自家発電を展開。水俣事業所(熊本県)の全電力を賄い、余剰分を地域の電力会社へと販売する。4月には電力事業部を設け、電力を新たな収益の柱へと育て上げる姿勢を明確に示した。柴田浩之事業部長は「再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)が1つの追い風になる」と指摘。とりわけ水力は「クリーンエネルギーの最たるもの。環境に対する負荷も小さく、地域や社会貢献にもなる」と語り、1世紀近い技術や経験の蓄積が最大限に生かせる水力発電を軸に拡大路線を追求する。
今回の同事業部発足にともない、最大のテーマとなるのが、半世紀ぶりとなる水力発電所の新設だ。現在、「すでに新規の水力発電所設置に向けたFSに取り掛かっている」(同)としており、具体化への取り組みを急ぐ。
このほか、既存の水力発電所のリニューアルも計画。今後、数年間をかけて、水俣製造所近辺で4〜5カ所の設備更新を予定する。実現すれば半世紀ぶりとなる水力新設と合わせ、将来は水力の自家発電の能力を11万キロワットに引き上げたいとしている。太陽光発電などとも組み合わせ、15年度には電力事業の業容を「現在の倍にする」(同)との夢を描く。
(了)
写真説明
上・昭和電工は今秋にも設備更新を行う方針を決定した(青木発電所発電機)
下・電気化学工業では50年ぶりに水力発電所を新設し能力増強を図る(大網発電所)