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【連載】国内化学工場 省エネ最前線
製法革新や地域連携深化コスト競争力の源泉に
激化するグローバル競争を生き抜くうえで、国内化学工場が避けて通れないテーマの1つが省エネルギー。東日本大震災以降、夏場を中心に電力不足はいぜん解消されていない。原発停止で天然ガスなどの輸入が増えるなか、進行する円安は輸入燃料の高騰につながり、自家発保有率の高い化学メーカーに大きな影響を及ぼしかねない。国内工場の省エネは「雑巾を絞り切った状態」と評されるが、各社はコスト競争力向上に直結する?攻めの省エネ?を追求している。(中村幸岳)
※触媒の技術を駆使※
最も効果が大きい省エネ施策としてプロセス革新が挙げられる。これまで常識と考えられてきた基礎化学品の生産プロセスでも抜本的な省エネ技術の開発が進む。例えばナフサ分解。ナフサを850度Cで熱分解してエチレンなどを得るが、消費エネルギーが大きい。そこで産官学連携により、触媒を用いて低温でナフサを接触分解する技術の開発が進行している。アンモニアも東京工業大学の原亨和教授らが生産プロセスで必要な圧力を現状の15?25メガパスカルから一気に1メガパスカル程度に下げる技術の実用化を目指す。ただ、こうした省エネ技術の確立には時間がかかる。実用化に必要な大規模投資が日本で実施されるかも不透明だ。
一方、コンビナート連携の深化に省エネの突破口を見いだそうとする動きが活発化している。これまでもコンビナート各社はRING(石油コンビナート高度統合運営技術研究組合)などを通じ、主にパイプライン敷設など連携基盤となるハード面の整備を進めてきた。産業技術総合研究所環境・エネルギー分野の中岩勝副統括は「こうした取り組みを生かし、ユーティリティーなど『ソフト面』の連携を深化させるべき」と説く。
※排熱など使い切る※
ソフト連携の一例が昭和電工と新日鉄住金化学が6月にスタートさせる省エネ投資。大分コンビナート内のスチレンモノマーや酢酸ビニルなど4プラントを連携させ、副生物や排熱をエネルギー源として使い切る。省エネ効果は原油換算で年間2万キロリットル。アジア市場の入り口に立地する好条件を最大限生かすためにも、こうした競争力強化は欠かせない。
国内工場はグループにおける省エネの「マザー拠点」として海外展開を支える。宇部興産は今年末、千葉石油化学工場でのブタジエンゴム(BR)設備増強に際し、スチーム使用量を10分の1に低減できる技術を導入する。この技術は東南アジアでの次期BR工場新設で全面導入され、アジア市場における同社製品の競争力を支える。
各社はこうした省エネ・環境投資を促す仕組みづくりにも知恵を絞る。カネカは09年に「省エネルギー投資促進制度」を導入し、年間2億円の枠を設けた。三菱ガス化学も同様の「環境投資枠」の設定を検討中だ。
※「見える化」を推進※
化学企業が省エネを本格化させたのは1970年代のオイルショック以降だが、当時と最も異なるのは電力や蒸気などユーティリティーの使用量をリアルタイムで可視化するシステムが実用化され効率的になったこと。DICはこうした「見える化」システムを国内工場に順次導入し、将来的に全品番で生産プロセスのエネルギー使用量を可視化したい考えだ。
省エネ取り組みにおける国内工場の競争相手は、台湾や韓国の化学企業だけではない。グループの海外拠点もライバルだ。増産投資がアジアにシフトするなか、最新鋭技術が実用化されるのは海外拠点になりがち。ある化学メーカーの現場担当者は「ユーティリティーの安いアジア拠点で高効率プロセスが導入されると国内組としてはつらい」と苦笑する。
ただ、その担当者も「省エネに終わりはない」と言い切る。製品ポートフォリオの変化や技術革新によってテーマは無限に生まれうる。あらためて各社の省エネ取り組みを追う。
(随時掲載。次回から環境面)
(了)
【写真説明】石油化学コンビナート各社はハード面に加えてソフト面でも連携を進める(昭和電工の大分コンビナート)