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2012年12月26日 前へ 前へ次へ 次へ

【連載(下)】 アンモニア 転機迎える基礎原料

「HB法」超える新技術は
日本で低圧法提案相次ぐ

 12月15日、東京工業大学の主催で緊急シンポジウム「アンモニアのブレークスルーを目指して」が開催された。土曜日にもかかわらず、約270人の参加者のうち過半数が企業関係者。テーマは東工大の教授らが開発した新規アンモニア合成触媒で、従来は難しかった低圧合成を可能にする技術として高い関心が寄せられている。

※セメント成分利用※
 「世界のエネルギー消費量を抑えられることにつながればインパクトは大きい」。同僚の細野秀雄教授とセメント成分「C12A7」を用いて新規合成触媒を開発した原亨和教授はこう語る。現在のアンモニア量産法は約100年前にドイツでフィリッツ・ハーバーとカール・ボッシュが確立したハーバー・ボッシュ(HB)法によるもので、「いま使われているプロセスはすべてHB法の変形」(宇部興産・千葉泰久顧問)といわれる。しかし、高温・高圧が必須のためエネルギーを多く消費することが問題。一説によると、世界のエネルギー消費の数%はアンモニア製造に使われているほど。
 両教授が開発したC12A7を用いたアンモニア合成触媒は、アルミナセメントの構成成分を電子物化した後、ルテニウムを担持させることで窒素結合の切断能力を高めた。「低エネルギー化を果たすにはより強い電子供与能力が必要」(原教授)と考え、籠状の構造を持たすなどの工夫を加えて既存の10倍まで活性レベルを引き上げた。
 今後の課題として原教授は高表面積化、新たなプロセスシステムの構築、ルテニウムに代わる安価な材料の3点をあげる。「まだ新しい合成ルートを見つけたという段階」として、企業と連携しつつ技術の磨き上げに努める構え。

※鉄触媒でも可能に※
 東京大学と九州大学の研究チームが12月に「ネーチャー・コミュニケーションズ」に発表した合成法も省エネに貢献する新たな技術だ。鉄を触媒とし、水と接触するだけでアンモニアになるシリルアミンという化合物を反応させ、常温常圧でアンモニアを作り出すことができる。安価な鉄で省エネ化が可能になるだけに注目度は高い。今後は反応効率化が課題になるとみられる。これら以外にも同志社大学の伊藤靖彦教授、東京農工大学の亀山秀雄教授らもそれぞれ新たな合成法を考案している。

※水素貯蔵が最適か※
 しかし、HB法の完成度の高さを打ち破るには、乗り越えるべき障壁は多い。宇部興産グループの宇部アンモニア工業は、約40年の操業の間で「触媒は2回しか変えていない」(千葉顧問)という。また、エンジニアリングメーカー関係者によると、プロセス反応効率化はこの50年で半分以上改善されたといい、「触媒が省エネに果たす役割は限られるのでは」と指摘する。このため、一連の新合成法は「水素エネルギー社会が来た時の水素の貯蔵・供給源として用いるのが最適だろう」(経済産業省関係者)との見方も出ている。
 かつてハーバー氏が提唱したアンモニア合成法を商業化できたのは、BASFに勤務していたボッシュ氏の協力があったからこそといわれる。日本発のアンモニア合成技術が歴史を塗り替えられるかどうかは、適切な用途先の見極めとともにいかに企業の協力が得られるかにかかっている。
(了)
【写真説明】上 東工大のシンポジウムには多くの企業関係者が参加した 下 C12A7結晶構造のイメージ


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