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2012年11月30日 前へ 前へ次へ 次へ

不透明な中で標榜するファイン戦略

 世界経済に不透明感が漂うなか、わが国ファイン・スペシャリティケミカル産業も厳しい舵取りが迫られている。長期化する円高や債務問題をめぐる欧州不安、中国をはじめとする新興国の成長率鈍化など不安材料は多い。主要用途である電子材料分野は、一部で在庫調整や販売価格の下落といった問題が顕在化し、先端分野を追い求めてきた企業も打撃を受けた。常に付加価値を求められるファイン・スペシャリティ企業にとって、当面は手探りの状況が続く。
 この間の9月中間決算をみると、電材関連を主体に展開する企業は厳しい内容を露呈した。「まさに電材不況」と嘆くトップも多い。この中にあってもスマートフォンやタブレット型PC向けに材料を供給する企業は恩恵を受け、新たな市場を巡る勝ち組みもはっきりしてきた。ただ、従来の携帯電話やパソコン向け需要の置き換えであることを忘れてはいけない。
 一方で、震災影響から脱した自動車関連は米国市場の復調もあり堅調に推移している。ただ、中国の買い控えの動きから現地の販売計画を下方修正する日系自動車メーカーも相次ぎ、不透明感は拭えない。ここではハイブリッド車や電気自動車の普及にともなう素材開発競争も激しいが、今のところ電気自動車に関しては力強さに欠ける。医薬品関連など安定した市場を持つ企業はそれなりの業績を残し、事業基盤の強さをみせた。
 かつて日本がリードしていた半導体や液晶分野は韓国などに主導権が移り、現在は先頭を走っているリチウムイオン2次電池関連についても予断を許さない。一方、これからディスプレイや照明用途に市場が本格的に形成される有機ELはすでに韓国が主導権を握っているとはいっても、材料そのものは日本が高い技術力を誇っている。むしろ、この立場を継続していくことに強みを求めるべきかもしれない。国際競争から国際協調へと変貌する過程で、確固とした存在感を築くことである。
 各社は下期も不安定要素が強いとし、通期業績予想を下方修正するところが相次いだ。東日本大震災を経て「もはや複数購買が当たり前になりつつある」とある首脳が指摘するように、"グローバル・ニッチ・トップ"であり続ける難しさも表面化してきた。
 どんな環境下にあっても、第一に顧客に求められる存在であり続けることがファイン・スペシャリティの目指すべき姿である。これを実現するためには、常に顧客ニーズを先取りした製品展開を行い、価格競争に左右されない事業体質を構築すること。この大命題に、改めて挑戦すべき時期である。


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