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2012年08月17日 前へ 前へ次へ 次へ

国際標準で水ビジネスの巻き返しを

 世界の水ビジネス市場は、2007年の36兆円から、25年には87兆円に成長すると予想されている。上水、下水など既存の事業分野に加え、海水淡水化、工業用水・工業下水、再利用水といった成長ゾーンが存在する。その成長市場の伸びは、既存分野の3倍以上が見込まれ12兆円程度まで拡大するという。日本は分離膜など部材や機器類では競争力を確保する一方で、EPC(設計・調達・建設)や事業運営に関する知見やノウハウ不足が指摘されてきた。
 出遅れている日本の水ビジネスの巻き返しに、国際標準化機構(ISO)による国際規格が貢献しそうである。昨年3月の理事会で、水に関する標準化の重要性を確認、タスクフォースを設置して本格的に動き出した。7月末には神戸で「ISO水ワークショップ」を開催、世界から多くの関係者が参加して熱心に議論した。
 ISOはこれまで、パイプや継手、灌漑機器など部品を中心に国際規格を発行している。世界人口が爆発的に増えるなかで、水供給が追い付かないという事態に対応するには、より幅広い分野で国際標準化を行い、低コストで安定的な水供給を目指す。9月の理事会では、これまで提案にあった課題を絞り込み、5つ程度の優先課題を選定する方針という。
 具体的には?漏水などによるウォターロス?灌漑や農業用などに使う再利用水?下水汚泥の有機物スラッジなどの有効利用?洪水など災害防止策?水処理設備のアセットマネジメント‐などに関連した規格が想定されている。この作業は有力水メジャーを抱えるフランスが主導するだけに、実効性のある規格になるとされる。
 国際規格が発行すると、EPCコスト低減のほか、研究開発のターゲットも決めやすく効率化が可能になり、顧客のみならず部材やエンジニアリング企業にも経済効果が大きい。一方で技術漏えいや製品差別化が難しくなり価格が低下するというデメリットもあるが、国際展開が遅れている日本企業にとって巻き返しのチャンスと考えるべきだろう。日本としては、水ビジネスで競争力を持っているフランスと連携して積極的に規格化作業に参加し、国際規格に反映させることを期待したい。
 パッケージ型インフラの海外展開は、日本の成長戦略に位置付けられているが、これまでは規模の大きい原子力発電や鉄道が注目されてきた。日本の水インフラ事業は公営事業として運営されていたこともあって競争力も不安視されてきた。水不足は世界規模で深刻化するだけに、国際規格を活用して攻勢に転じてもらいたい。


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