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2012年03月22日 前へ 前へ次へ 次へ

実効性を期待したいタイの洪水対策

 タイのインラック・シナワット首相が先ごろ来日し、治水対策への取り組みなどについて説明した。政府や経済団体などを精力的に訪問して、日経企業を引き留めるための熱意あふれるアピールだった。タイ政府は治水対策に対して、今後数年間で9000億円以上を投じる。川上の森林やダム管理から始まり、河川のしゅんせつ、堤防や水門の整備、個別工場での防水に至るまで6段構えで洪水を防ぐスキームを策定して早急に実行するという。
 タイ政府では、昨年の大洪水の教訓から指揮系統を一本化するため首相を委員長とする指揮機関を設置することに決めたことも評価したい。だが、まだまだ課題が残されている。
 例えば現地からの情報によると、日系企業の多くが損害保険に再加入できない状態が続いているという。大手企業だけでなく、大半の企業が損害保険に加入しない見切り発車の状態で操業を再開しているという。再び大規模の水害が発生したら大きな打撃を受け、その際はタイから撤退する企業が続出するだろう。タイ政府は災害保険基金の設立を明らかにしている。1250億円規模の基金で、いわゆる政府主導の再保険制度と考えられる。首相来日時にはこの保険制度の詳細が決まっていなかったようだが、早期に詳細を明らかにし、日系企業がこの災害保険に加入できるよう政策を推し進める必要があるだろう。
 また、タイ政府は、洪水により被災した工業団地にある中小企業を含めた製造業者を支援するため、ソフトローンとして9550億円の予算を組んだという。だが、どのような条件でローンを組めるのかわからないという日系企業の声もある。日系企業によりわかりやすく説明していくことも肝要だろう。
 被災した南部の工場では、より正確な情報が迅速に伝えられていれば、設備を避難させることもできたと悔しがる経営者もいる。気象予報や災害警報システムの構築に今年から来年にかけて1570億円の予算を組んでおり、早期に実効性のあるシステムを築いてほしい。
 また、タイに生産拠点を置く魅力の一つとして、タイがミャンマーのダウェイで進めている国際港の開発がある。ベトナム、カンボジアからバンコクを経由しダウェイに至る、東西回廊や南部回廊が完成すれば、ダウェイ港からインド方面への輸出入が可能となり、タイは東南アジアにおける物流の一大ハブとなれるだろう。だが、2015年完成予定のこの開発が難航しているという。ミャンマー政府は別の場所での国際港建設を目指しているという話もあり、今後の成り行きに注目したい。


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