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2012年02月22日 前へ 前へ次へ 次へ

サムソン電子の経営戦略転換の波紋

 韓国サムスン電子がビジネスモデルの転換を急いでいる。潤沢な資金を背景にした大胆な投資で高い成長を続けてきたが、新興国の追い上げと日米欧との技術競争の狭間に陥っている。中核事業である液晶パネルの分社決定も「背水の陣」との見方が強い。同社と関係が深いわが国部材産業にとって、今後の経営戦略の影響は無視できない。
 薄型テレビ市場の低迷は深刻である。液晶テレビ最大手のサムスン電子さえ、液晶パネル事業を本体から切り離さざる得なくなった。分社化は構造転換を効率的に進める手法だが、その先にある中小型と有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)ディスプレイに経営資源を集中するリスクは小さくない。
 スマートフォンなどに需要急増の中小型ディスプレイはカスタム性が強く、もともと日本勢の得意分野。液晶ではなく有機ELでの差異化を進めたいところだが、「ベンダーがサムスンだけでは採用できない」「マル秘の開発情報がその日のうちに筒抜けになった」など、ユーザーに不信の声も強く、分社化で解決するとは思えない。
 一方、現状の有機EL大型テレビは歩留まりが上がらず、採算が厳しいようだ。大型基板で量産するには、技術的な課題の残る高分子法の導入が不可欠とされるが、あえて量産に踏み切るのは50型以上のハイエンド品は、有機ELで差異化して優位を得るという狙いがある。
 同社はDRAMという汎用半導体メモリでも世界トップだが、こちらも収益力の低下が目立つ。世界経済減速による需要鈍化の厳しさは、ウォン安ではカバーできない。そこで、より付加価値の高いロジック半導体進出を決め、受託生産を通して実績を挙げつつある。ただ、これも業界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)や米大手との競合に勝ち続けねばならない。
 こうしたサムスン電子の経営戦略の転換は、日本のエレクトロニクス業界との競争激化につながるが、部材業界には追い風となろう。高分子系をはじめとする有機EL材料開発は日本が先行しており、サムスンにとっては大型テレビの量産には日本勢との緊密な連携が必須。かつて液晶事業を立ち上げたときのように、二人三脚による取り組みに似てくる。
 一方半導体材料でも一段と先端材料の需要が高まる。同社はプロセス微細化において、2回/2重露光やEUV(極紫外線)など次世代技術の導入に積極的だが、これに必要なフォトレジストやシリコンウエハーは日本の部材メーカーが圧倒している。わが国部材業界とサムスン電子との関係はますます深まりそうである。


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