急がれる技術流出対策の戦略構築
わが国製造業がグローバル競争時代に生き残り、収益力を向上するには海外生産拡充を加速させることは間違いない。この際に問題になるのが、優れた技術の流出である。ノウハウも含めてブラックボックス化などの対策に知恵を絞っているものの決定打は見いだしていないようだ。結局、国内のマザー工場で国際競争力のある最先端技術を絶えず開発し続けるという厳しい時代を迎えている。
今年の「ものづくり白書」では、高い法人税、電力制約や労働規制など国内製造業の6重苦と、成長する新興国で収益を確保するため製造拠点の海外展開は不可避と強調している。ただ、すべての企業が海外展開に前向きではなく、技術流出の不安を示す。とくに韓国、台湾、中国に関しては50-60%の高い比率で懸念を表明している。
それでも取引先の要請などから海外生産に踏み切らざる得ない企業が多く、「めどが立たなくともビジネスチャンスを優先」「技術流出防止に関係なくビジネスチャンスがあれば移管」という企業が80%を超えている。事業の移転先として比率を高めているのは中国だが、第三者による権利侵害などを含め知的財産保護では多くの課題が指摘されている。
技術流出ルートとしては、現地採用従業員や販売製品を経由していることが圧倒的に多く、その対策に現地従業員に対し情報へのアクセス制限、コア部品・材料などの情報を営業秘密として管理、設備にノウハウを封じ込め日本から輸出するなどの対策を講じているが、効果には限界があるだろう。
このほか、知財や標準化などを通じた技術流出も多いという指摘もある。具体的には、日本企業が出願した特許を詳細に分析して、研究や製造技術開発に利用している。標準化も同様で、多くの企業が参加して進める検討段階の情報に関心を示す海外のライバル企業も多いという。この対策として特許を出願せずにノウハウとして秘匿する、標準化では技術・ノウハウに属する分野では対象にしないなど、クローズとオープンを使い分けて戦略的な対応が必要になっている。
日本企業の成長戦略を考えると、拡大する中国などアジア市場をいかに取り込めるかが課題。これまでは生産拠点の移転が中心だったが、現地ニーズに対応した製品開発を進めるには開発拠点、さらには優秀な現地研究者を採用した研究拠点を新設する企業も増加しそうだ。技術流出は避けられない時代になっていると覚悟して、国内拠点は子会社やアジアの競合企業より先行できる戦略を実行できるかが勝負になろう。