【持続成長と化学の力】(15) JSR 小柴満信社長
東日本大震災とそれに続く電力不足、急激な円高、タイの大洪水という逆境にあるにもかかわらず、通期で増収増益を見込むJSR。サプライチェーンの断絶も予想以上に順調な復旧を実現した。小柴満信社長は事業拡大と事業継続計画(BCP)強化の一石二鳥を狙ってグローバル化を一段と進める考え。
※拠点複数化が奏功※

▼ 大震災から8カ月余り経過しましたが、産業界にはいまだ影響が残っています。
「ユーザーの復旧が早かったし、30億円の営業利益の下振れを見込んでいたが、10億円に収まった。石化事業はライセンス先からの製品融通を受けたりしながら、何とか顧客の製造ラインに迷惑をかけずに対応できた。半導体などのファイン材料は従前からグローバルに多拠点化しており、原料調達先も複数化が進んでいた」
「それでも想定外の出来事に備えて事業継続マネジメント(BCM)/BCPを再検討しなければならない。地震や火災発生を仮定した防災マップの見直しもされているので、この内容を参考にしたい。まず従業員の安全確保で、避難した後の行動をどうするか、情報を知っているかいないかで行動は大きく変わってくる」
▼ 具体的なBCM/BCP強化策は。
「事業拡大のために石化事業ではライセンス提携を行っているが、結果として今回の震災のBCMに役立った。ライセンス先は増やしていきたい。ファイン事業はすでにグローバル体制を構築しており、見直しは必要ないだろう。戦略事業もライセンスによって拡大するものではなく、ファイン事業と同様に自前で拡大していく」
※スリム化徹底寄与※
▼ 製造業の海外シフトが目立っています。
「さまざまな業種があるが、国内は1~2%の成長が続くだろう。しかし、相対的に海外売上高が大きくなるのは仕方ない。日本は新たな成長のためのエンジンを作るべきだ。例えば、電力をあまり使わなくてすむような技術はまだ開発の余地がある。複層ガラス化していない大型ビルは多いし、強度上、遮光フィルムを貼れず冬でも冷房が必要というのは、化学の技術で解決できるだろう」
▼ 業績は堅調に推移する見通しですが、逆境を大過なく乗り切れた要因は。
「リーマン・ショック時に経営のスリム化を徹底して進めたことが大きく効いている。稼働率が30%ダウンしてもトントンではなく、適正な利益を確保できるようにしてきた」
※マクロ経済に懸念※
▼ 為替は現状の円高が定着しそうです。
「対ドルに対しては、今後2年ほどは今の水準が続くと思われる。したがって円高を前提にした経営が必要になる。原材料もさらに海外調達を強化するが、それよりも重要なのはユーザーの生産拠点がどこに移るのかということ。中国をはじめアジアの重要性はさらに高まっていくだろう」
▼ 来年にかけての懸念材料は。
「気になるのはマクロ経済の行方で、欧米市場は難しい状況にある。中国経済の成長率が8~9%で推移してくれればいいと考えている」