【持続成長と化学の力】(14) テルモ 新宅祐太郎社長
東日本大震災は、国内製造業に部品・材料の調達が停滞するといったサプライチェーンの課題があることを浮き彫りにした。人命に直接かかわる医療機器メーカーにとって、製品の安定供給は社会的使命でもある。医療機器の国内トップメーカーであるテルモの新宅祐太郎社長は、「今回の震災で部品・材料調達のリスクの大きさをあらためて認識した。海外からの部材調達と現地生産を拡大させたい」と対応策を語る。
※石化原料調達難に※
▼ 震災による生産への影響はどのようなものでしたか。
「計画停電にともなって、工場で十分に製品が作れなかったことが大きい。注射器など24時間稼働で製造している製品は、計画停電で十分に供給することができなかった。輸液は自社工場の計画停電と、提携先企業が被災を受けたことで供給が滞ってしまった。ユーザーに大変な迷惑をかけてしまった」
▼ 部品・材料の調達が困難なケースもあったと聞きます。
「部品・材料の調達も綱渡りの状態だった。当社は医療機器のなかでも石油化学系の原料を使用する医療材料の製品が多い。石油化学プラントが被災したことで大きな影響を受けた。とくに接着剤に使う原料のメチルエチルケトン(MEK)は医療機器の製造に不可欠だが、入手するのが大変困難だった」
「医療機器の場合、薬事承認された原材料情報にわずかな変更が生じる場合も、あらためて一部変更承認審査が必要とされる。同じ原料が入手できないから、別のところから異なる原料を持ってきてすぐに使用するということはできない。今回の地震によって、事業を継続するうえで部品・材料の調達リスク、素材の重要性をあらためて認識した」
※海外生産拡大急ぐ※
▼ こうした経験を教訓にして、どう今後に生かしていきますか。
「まずはBCP(事業継続計画)対応力を強化する必要がある。工場などで自家発電能力を向上させていく。また、海外からの部品・材料の調達と、現地生産を拡大していく。グローバルでの生産体制の分散化は時間がかかるが、進めていかざるを得ない。中期経営計画では海外生産比率を現在の46%から15年度に50%へと引き上げる目標を掲げているが、急ぐ必要があるだろう」
「ただ、日本のモノづくりの強さは、開発拠点と生産拠点が同じ場所にあるというところにある。開発拠点と生産拠点が完全に分断されると、日本のモノづくりの強さにつながらない。当社としては、日本にある工場はマザーファクトリーとして最先端の製品開発、生産技術を磨く拠点として位置付けている。そこで生まれたものを海外工場に生産移管していきながら事業を拡大させていく」