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2011年11月17日 前へ 前へ次へ 次へ

薬物治療を変えるコンパニオン診断

 治療薬の有効性や安全性を患者ごとに判定するコンパニオン診断薬が注目されている。がんや自己免疫疾患などの領域を中心に高額な新薬が増えているが、患者によっては効果がないケースもあり、投与前に遺伝子検査などで見極めができれば無駄な投薬を回避できるからである。臨床試験(治験)に活用すれば薬剤効果の高い被験者だけを集められ、治験費用の抑制と新薬開発の成功確率向上につながる可能性があるだけに、製薬メーカーの新薬開発への貢献も見込まれる。
 積水メディカルが2009年に発売したコンパニオン診断薬は、抗がん剤イリノテカンの投与による副作用の発現を遺伝子型判定で判別でき、投薬量の決定などに用いられている。ヒト遺伝子判定を利用した診断薬で医療保険適用の先駆けとなった。今年はロシュ・ダイアグノスティックスが抗体医薬の抗がん剤トラスツズマブ、医学生物学研究所が抗EGFR抗体医薬に対するコンパニオン診断薬をそれぞれ発売している。
 国内でこれまでに体外診断用医薬品として承認され、医療保険が使えるコンパニオン診断薬はまだ十品目に満たないが、ベンチャーも含め研究開発への取り組みは着実に広がっている。また協和発酵キリンは今年4月に同社として抗体医薬の第1号製品候補を国内で承認申請したが、その抗体医薬に対応する診断薬を同社子会社が申請した。治療薬とコンパニオン診断薬を並行開発・同時申請した国内初のケースとみられる。
 製薬業界では、個別化医療への対応を重点課題に掲げる動きが近年目立つ。患者の遺伝的背景などをもとに最適な治療法を提供する個別化医療は、薬物治療にパラダイムシフトをもたらす可能性があり、診断の重要性が増す。製薬メーカーと診断薬メーカーの連携なしには対応できず、昨年以降、海外では製薬大手と診断薬企業との提携が相次いでいる。日本でもこうした提携が活発化していくのは必至とみられる。
 来年4月の診療報酬改定に向けた議論がこれからヤマ場を迎えるが、国民医療費全体の約2割を占める薬剤費の抑制策では後発医薬品の普及が大きな課題になる。しかし治療効果のより高い新薬の医療財源を長期的に確保していくためには、個別化医療の推進が不可欠である。
 コンパニオン診断薬を使って治療効果などの高い患者を選別すれば治療薬の処方は制限され、医療経済に貢献する。このことが製薬企業にとっては不利にならないような仕組みも必要で、開発の指針や薬価算定の仕組みなどを早急に整備していくことが求められる。


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