電力制約の桎梏解消は喫緊の課題だ
東日本大震災で発令されていた東京電力、東北電力管内の電力使用制限令が、先週末、解除された。今年の夏は昨年より低温で推移したことともに、大口需要家を中心に節電対策が徹底されたことが、停電などの非常事態を招かなかった要因である。しかし定期検査を終えた原子力発電所の再稼働の見通しは立っていない。政府は自治体、国民との間で失われた信頼関係を早急に回復させ、電力制約の桎梏を解消する必要がある。
7月1日から実施された制限令で、大口需要家は昨夏のピーク比15%の使用制限を課せられた。東電はガスタービンの増設や休止させていた火力発電所の再稼働などで最大5570万キロワットを確保、一方で自動車産業は休日シフトで対応、化学産業では自家発電のフル稼働などで電力を確保した。オフィスや家庭における節電努力の貢献も大きかった。
しかし、電力制約の本質的な問題は片付いていない。むしろ、この間の政府、東電の不手際で、問題はこじれているのが実情だ。最大の問題は原発が立地する自治体や住民との間で失われた信頼関係である。
東電は、政府が原子力発電所の再稼働の条件とした安全性を評価する「ストレステスト(耐性検査)」を柏崎刈羽原発の1号機と7号機で1次評価を始めた。設計時の想定を超える地震と津波について炉心損傷に至るシナリオに基づいて、冷却系統などの安全上の余裕度をコンピューターで評価するもの。総合的な安全性をチェックする2次評価も年内には実施する計画だ。東電は定期検査終了時に1次評価の結果を報告する予定だが、自治体がそれをどう受け止めるか不透明である。
東電管内では今夏、制限令のもとで電力使用のピークを分散できた。しかし、冬にかけての対応はこれからである。
こうしたなかで事態が深刻視されているのが、関西地域である。関西電力は総発電量のほぼ5割を原子力発電に依存している。今夏も綱渡りの電力供給を余儀なくされたが、これは制限令など法的拘束力を持つ節電対応が実施されなかったことにも起因している。6月初めから8月初旬にかけての節電率は、大口需要家の対応のばらつきもあり4%以下にとどまった。
今回の電力危機は使用制限とともに、自家発電への切り替えなどによるコスト増をもたらした。いま求められているのは、安全性を十分に担保しながら定期検査を終えた原子力発電所の再稼働を速やかに実施することである。そのためには、政府が十分な情報開示を行って自治体、住民との間の信頼関係を回復する以外にない。