日中環境協力支援センター・大野木昇司社長インタビュー
中国政府は今年、第12次5カ年計画(2011ー15年)を始動した。環境政策では、新たにCO2や窒素酸化物の排出削減目標を設定。化学物質管理でも新規化学物質の登録制度が改正され、本格適用される。規制強化に伴い、日本の環境技術へのニーズはさらに強まりそうだ。環境ビジネスのコンサルティングなどを手掛ける日中環境協力支援センターの大野木昇司社長に中国の環境規制や環境ビジネスの現状を聞いた。
―中国で第12次5カ年計画が始動しました。
「新5カ年計画では、大気汚染対策として新たにGDP当たりCO2排出原単位の10年比17%向上、窒素酸化物排出量の10%削減に加え、水質汚染対策としてアンモニア性窒素排出の10%削減などを目標に掲げた。窒素酸化物は火力発電所からの排出基準も近く厳格化される。重金属汚染防止を目指す5カ年計画を策定したのも特徴だ」
「目標は省政府や企業の『ノルマ』で、達成できなければ罰則が課される。昨年、中国でガソリン供給が滞ったり計画停電が実施された背景には、目標を是が非でも達成しなければならない省当局の事情もあった」
「中国政府は従来、排出物の『量』削減に注力してきたが、最近は『質』の改善に重点を移しつつある。つまり、『点』(工場などの排出削減)に加え、『面』(都市部での汚染濃度改善、光化学スモッグ発生日削減など)についても指標を設け、目標達成を目指している」
―昨年10月に施行された「新規化学物質環境管理弁法」の特徴は。
「改正弁法は、欧州REACH規則を意識したものだ。新規化学品を扱う事業者は、そのリスクやハザードなどに関する『測定項目』を把握し、環境保護部に登録を申請する」
「事業者の負担は増すが、登録コストの軽減措置も講じられた。例えば、申請方法には化学物質の取り扱い量に応じて『通常申請』『簡易申請』『科学研究届出』の3種類がある。通常申請は取り扱い量の多寡に応じてさらに4ランクに分けられ、量が少なければ測定項目も少なくなる。」
「環境保護部は登録申請を受け、新規化学物質を(1)一般類(2)危険類(3)重点環境管理危険類に分類して登録する。危険類と重点環境管理危険類はリスクが高いとみなされ、危険化学品安全管理条例など他の法規の規制対象にもなる。同条例は12月1日付で施行される。これに伴い、中国でもGHS(化学品の分類・表示に関する世界調和システム)やMSDSが本格始動する」
―いま中国で求められる環境技術は。
「最もニーズが大きいのは水の高度処理技術。水処理膜の機能・耐久性は日系企業に大きなアドバンテージがある。インバーター付きの省エネ型エアコンや、窒素酸化物排出をカットする選択式触媒還元(SCR)脱硝用の触媒なども有望だ」
―中国における環境ビジネスの要諦は。
「環境ビジネスは規制ビジネス。規制が厳しくなれば設備投資が進み、ビジネスチャンスが生まれる。重要なのは、政府の政策を動かす意識。欧米企業は新規制に関するパブリックコメントに応じて積極的に意見を出し、北京で活発なロビー活動を展開している。日本企業も北京の政策立案過程に高い関心を持ち、情報収集力を高めることが必要だ」
―中国市場は魅力だがリスクも小さくない。
「中国の技術は日々向上しており、現地最大手の太陽電池が日本で販売されているように、他の技術でも日本に進出してくる可能性がある。そうなる前に中国に打って出るのも一つの選択肢だ。中国環境市場の魅力はなお大きい。大前提は中国市場とニーズをよく勉強することだろう」
大野木氏は2005年に日中環境協力支援センターを設立。中国で環境ビジネスを手掛ける日系企業の支援や、日本の官公庁や研究機関、大学からの各種調査受託、パートナーマッチングなどを手掛ける。09年には北京に現地法人を設立した。