動き出す化学物質管理のアジア支援
来週の4ー5日、日本―ASEAN経済産業協力委員会(AMEICC)の化学産業専門家会合がインドネシアで開催される。経済発展にともなって重要性を高めている化学物質管理が主要な議題になる。世界の化学物質管理政策は実質的な被害を重視するリスクベースに移行しつつあり、東南アジアでも制度導入が始まっている。ただ行政を含めて実効ある化学物質管理を施行できる体制は確立できておらず、先進国の支援を必要としている。経済産業省は日本化学工業協会など産業界の協力を得て、効率的・効果的な化学物質管理の移転に取り組む。
世界の化学物質管理の共通目標になっているのは、持続可能開発に関する世界首脳会議(WSSD)で決まった「化学物質による人の健康と環境にもたらす著しい悪影響を2020年までに最小化する」とする国際合意。これに基づいてEUの新化学品規制REACH、日本の化学物質審査規制法(化審法)が施行され、米国では有害物質規制法(TSCA)の改正作業が進んでいる。韓国や中国でも化学物質管理規制の強化が行われている。その共通点は既存化学物質を含めたハザードベースの安全性評価を加えて、排出量(曝露量)を踏まえたリスクベースの管理や、化学品のユーザーを巻き込んだサプライチェーン全体での情報共有化などだ。
しかしながら規制には相違点も多い。すべての化学物質を対象に、その評価を事業者の義務とするREACHに対し、化審法はリスクを重視して評価物質に優先順位を付けて絞り込み、評価は国が責任を持つなど違いがある。より高い目標を設定したREACHが世界の標準になるという見方があり、発展途上国でもREACHをベースに規制を導入する動きがあるが、どこまで機能できるかという点では疑問を残す。
経産省では化審法をアジアの化学物質政策に移すことを模索したこともあるが、今回のAMEICCでは東南アジアの執行体制を配慮した「アジアン・サスティナブル・ケミカル・セーフティー構想」を提示する。サプライチェーンにおける化学物質のリスク管理で重要になっている分類・表示の国際調和(GHS)の整備と安全性データシートをアジアに広める。このほか、一方的な押し付けでないアジアの状況に応じたリスク評価手法や安全性試験法の開発、整備を共同で推進する。
これらを浸透させることで、アジアの化学物質管理の向上とともに、日本企業の化学品貿易や現地生産の拡大に貢献することも期待できる。産業界も積極的に支援する方針を打ち出しており、成果を注目したい。