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セルロースナノファイバー 産業化へオールジャパン《1》
「オールジャパン」を体現する天然のナノ素材、セルロースナノファイバー(CNF)。2000年代半ばに大学から飛び出し、公的研究へとステージが進展した後、コンソーシアムが結成され、省庁は異例といえるスクラムを組んだ。産業振興に活用しようと地方自治体も動き、製造業の開発魂には火がついている。
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*3省課長が一堂に*
「3省の課長が一堂に会した」。経済産業省の渡邉政嘉紙業服飾品課長は興奮を隠さない。
先月23日、京都大学の宇治キャンパス内の生存圏研究所。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトの成果として、CNFの実証製造ラインが披露された。この場には経済産業省、農林水産省、環境省の課長の顔ぶれに加え、関総一郎近畿経済産業局長も列なった。
縦割りが慣習の省庁がCNFでは手を取り合い、主体的に関与している。
CNFは植物のセルロースをナノサイズになるまでほぐした繊維。植物が太古から自己保存のためにつくり出した天然の機能材だ。鉄の5倍の強度、ガラスの50分の1の低い線熱膨張性を有する。純度100%のCNFはカチカチで部品加工には向かない。だが少量を樹脂やゴムに添加すれば強度を高め、部材を薄肉化できる。透明材料にもなり粘度調整もできる。自動車、電子材料、化粧品など幅広い産業でイノベーションを起こす可能性がある。使い頃の人工林が潤沢に眠る日本は資源をもてる。カーボンニュートラルで持続型産業の創出も可能だ。
成長産業が欲しい経産省。温暖化ガスを減らしたい環境省。国産農水産物の出口を探す農水省、林業を再生したい林野庁。CNFの大きな円に各省庁の思惑が重なる。京都大学、東京大学のシーズを土台に、製紙会社などが絡む素材開発は本格化している。機は熟した。
*相次いで連携組織*
「コミュニティーをつくろう」。経産省は産業技術総合研究所に呼びかける。14年に発足した原料側と需要側の出会いの場「CNFフォーラム」は、2年に満たない間に参画企業・団体数が180を超えた。同年8月には省庁連絡会議も発足し、文部科学省を含め四半期に1度、会議を開く。渡邉課長は「経産省はいつも人の縄張りに手を出すと煙たがられるが、CNFではうまくいく」と笑う。バイオマス資源の活用を謳う政府方針にも合致し14、15年の「日本再興戦略」に素材として記載された。各省庁の予算取りも熱を帯びる。
関西では、05年に京大のCNF研究に目をつけ支援した近畿経産局が動く。14年末に立ちあがった「部素材産業―CNF研究会」は実用化に力点を置き、大学、公設試、製造業を巻き込む。このモデルは各地の自治体にも移植が進んでいる。
*全国に魅力広がる*
「ふじの国CNFフォーラム」を組織した静岡県。地場企業向けに開催したセミナーでは、応募が殺到し定員が超過。担当者は断るのに平謝りした。「行政をやってきて初めての経験だ」。CNFの魅力は全国を駆け巡る。
垂直連携する日本。北米、北欧諸国も産業化を目指すが、原料側と加工側の関係は日本に比べ希薄とされる。アドバンテージを生かすにはアプリケーションでも主導権を握る必要がある。経産省は昨年、ISOにCNFの標準化提案を主導。「評価手法を定め、製造法をブラックボックスにすれば優位に立てる」。狙いは世界だ。
「日本の資源を使って日本の技術で競争力のあるものづくりを」。多くの関係者に夢を与えるCNF。前途にはコストや使いこなすための課題も多い。だが、社会実装の足音は確実に近づいている。
(つづく)