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DSM 大幅事業転換で成長軌道に 健康・サステナビリティに貢献
<フェイケ・シーベスマCEOに聞く>
DSMは事業内容を大幅に転換し、成長の軌道を維持・強化してきた。1902年にオランダ国営の石炭会社としてスタートしたが、現在では事業の主軸はライフサイエンスとマテリアルサイエンスの2分野。転換の背景は何か、どのような企業を目指しているのかなど、フェイケ・シーベスマCEO(最高経営責任者)に聞いた。
▽ CEOに就任しておよそ9年になります。この9年だけでもDSMの変化は顕著です。
「DSMは9年前とは異なるポートフォリオを作り上げた。ほぼ、すべてのバルクケミカルから手を引き、今ではニュートリションを中心とするライフサイエンスとマテリアルサイエンスの領域に集中している。この結果、DSMが関わる市場も変わった。9年前は肥料、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの事業を擁していたが、今日のDSMは、最大の食品・ニュートリションの機能性原料を手掛ける企業であり、マテリアルサイエンスの大手である。こうしたスペシャリティの領域とバルクケミカルの市場状況は異なる。バルクケミカルの市場は不安定であり、例えば原油価格の動きに大きく左右される。スペシャリティは、より安定した市場であり、DSMは、より成長の可能性を持つ企業になった」
▽ 事業転換には、どのような背景がありますか。
「DSMは、朝日が昇る時のような勢いのある領域に投資することを選択した。そして何が、より重要になっていくのか、トレンドは何かを検討した。健康、サステナビリティといったことに貢献できれば、より成長の可能性が高まり、収益も向上する。バルクケミカルの領域では収益の変動が大きく、株主はこれを嫌う。より安定した収益を計上し、それを伸ばしていくのはスペシャリティの領域である。さらにバルクケミカルの領域で事業を続けていたならば、例えば非常に競争力を持つ原油やナフサを手に入れることができる中東の競争相手が現れ、より困難な事業環境になることも予想された。収益をより安定すること、バルクケミカルの競争が激しくなることなどがポートフォリオの転換の背景になった」
▽ 2つの領域の事業活動の相乗効果を引き出すことに力を入れています。
「ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの最終的な市場は違う。しかし例えば生産に目を向けると、そうではない。食品の材料や自動車に用いられる素材を生産する際に化学合成技術が使われる。そうした生産に使われる技術や知見を、それぞれの事業に携わる人たちは互いに学び合っている。バイオテクノロジーを、ライフサイエンスとマテリアルサイエンスの双方で生かしている。食品分野で培った発酵技術をマテリアルサイエンスの領域で幅広く活用もしている。共通の技術基盤は強固であり、それぞれの知見を相互に生かすことができているし、これから、さらにそれが広がっていくだろう」
「ユニークなポートフォリオを持つことは、新エネルギーの領域で事業を展開する契機にもなった。現在、米国で第2世代のセルロース系エタノール事業を進めている。ニュートリション事業で確立した酵素や発酵などの技術を用いたものだ」
▽ そうした事業の成功には、常にイノベーションを追求する姿勢が重要になります。
「革新的であるためには(先入観を持たず、多くの意見や考えを受け入れる)『オープン・マインド』であり続けることが必要だ。DSMは『BRIGHT SCIENCE. BRIGHTER LIVING.』をスローガンにしている。科学と技術の、それぞれの力を用いて生活の質を高め、人々がより健康である社会を創出したり、より良い地球を実現することに貢献していきたいと考えている。このためにオープン・マインドが大切であり、科学と技術に立脚した企業であるからオープン・イノベーションも重要になる」
▽ 日本でもオープン・イノベーションに関する活動に力を入れています。
「日本は大きく成長している市場ではないから、なぜ、それほど日本に興味を持つのか、と聞かれることがある。私は30年近く、たびたび日本を訪れ、日本の企業経営者の方々と関係を築いてきた。この長年の関係が日本では重要な役割を担う。私は、そうしたことをとても好ましく思う。長年の関係によって相互の信頼が生まれ、オープン・イノベーションを進める際にも、この信頼関係が生きる。確かに日本の市場は全体として大きく成長していないが、ある特定の市場は伸び、そしてそれはとても興味深い市場だ。DSMが関わる領域では、新エネルギーや健康・ニュートリションといった領域がそれだ。日本は高齢化が進んでおり、糖尿病などに対応した新しいコンセプトを日本で創出できれば、その市場を広げることができる。そして10年後、あるいは15年後に中国などで、その知見を活用できる」
(聞き手=高梨雅人)