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<eco 異業種に学ぶ> オリエンタルランド ディズニーの世界観と共存
年間で3000万人以上のゲスト(来園者)を迎える東京ディズニーリゾート(TDR、千葉県浦安市)。運営するオリエンタルランド(OLC)では国内首位のテーマパークを通じ、地球環境との調和を深めようとしている。その柱の1つが今夏から本格的に始まった土産物袋のエコ原料化。原料の約40%に植物由来のポリエチレン(PE)を使い、TDR内にあるグッズを販売する全99店舗で導入に踏み切った。ほかにも東京ディズニーシー(TDS)内を走る車両は、早ければ2016年度にもすべて電気自動車化する方針だ。夢や感動の世界観を壊すことなく、地球環境に負荷をかけないパークへの転換が進んでいる。
「テーマパークのストーリーから逸脱しない何となく感じられる環境視点を大切にしている」。そう語るのは、社会活動推進部の石塚直哉課長。異空間を楽しみに訪れるゲストに対し、さりげなくやるのがポイントというわけだ。
14年2月、JR舞浜駅のすぐ近くにあるディズニーショップでサトウキビの搾りかす(廃糖蜜)から作られた土産物袋の導入がひっそりと始まった。同年9月には東京ディズニーランド(TDL)内とTDS内にあるそれぞれの物販施設が加わり、計3店舗に拡大。検証と改良を繰り返し、15年7月には一気に全ての店舗での採用を決めた。
ライフサイクルあたりのCO2の排出量は、従来の石油由来に比べて30%ほど減らせる。コストは上がるが「来園者の多くが土産物を買って帰るなか、量として出る包材をエコ化する必要があった」と石塚課長は狙いを話す。
ただ全店舗といっても、年間を通じて導入したわけではない。OLCはおおよそ2―3カ月ごとに季節にちなんだイベントを開催している。例えば7―8月は夏祭り、9―10月はハロウィーン、11―12月はクリスマスといった具合だ。これにあわせて土産物袋のデザインも一斉に様変わりする。
次のイベントまでの数日間はレギュラー包材と呼ぶ定番の袋が用意され、これについては今のところ石油由来のPE製となる。バイオPEを使うかどうかの具体的な言及は避けたが、いずれ「そういう方向で動く」(石塚課長)ことになりそうだ。
環境配慮への新たな取り組みは土産物袋にとどまらない。TDS内を周遊する20世紀初頭をテーマにした自動車型のアトラクション「ビッグシティ・ヴィークル」について、全7台を電気自動車に切り替える考えを明らかにした。現在は1台のみだが、15年度中にまずは計4台の体制を整える計画としている。
さらにリサイクル分野でも、より細かな分別に対応したゴミ箱の設置に乗り出す。第1弾として4月からTDLとTDSの計5カ所で始めており、順次増やす。飲み残しを分けた紙コップや紙トレイはトイレットペーパー、スプーンやフォークなどのプラスチックは再生樹脂製品、その他可燃物は固形燃料といった形で再資源化する。
トイレットペーパーは園内の一部施設で使用する「リサイクルループ」を構築するなど多様な循環の輪を描く。再資源化された割合を示すリサイクル率は、TDSが通年稼働した02年度は50%に満たなかったが、13年度にはTDR全体で74%にまで高まった。
温室効果ガスの排出削減、リサイクルの促進、廃棄物の抑制など一定の成果はあげているが、石塚課長は「設備も技術も新しいものを取り入れながら、常にエコが配慮されているパークを目指したい」との思いを強める。ディズニーならではの世界観という難しさに負けずに、今後も試行錯誤を続けていく。
◇ ◇ ◇
TDRでは施設やアトラクションの照明、装飾に使われている白熱電球の発光ダイオード(LED)化に力を入れている。「ワールドバザール」エリアの建物を縁取るリムライトをはじめ、街灯や店舗の明かりなどの一部にLED電球を取り入れる。100ワット以下の一般照明用白熱電球だけをみれば、「99%くらいはLED化した」(石塚課長)。
一方でTDRの電飾と言えば、多くの来園者に長く親しまれている光で彩られた夜のパレード。約20億円を投じ、7月にリニューアルした「東京ディズニーランド・エレクトリカルパレード・ドリームライツ」では半数以上の電球をLEDに置き換えた。
ただ、社会活動推進部の明石光弘チーフリーディングスタッフによると、「ショーの雰囲気や質感を出すために、どうしてもLED照明に変えられないものがある」と胸の内を語る。
シャープな光が特徴的なLED電球では「柔らかい光や、オレンジに近い暖色系が表現しにくい」(石塚課長)のだという。こういったニッチな需要に応えるLED電球が開発されれば、積極的に採用したいと考えている。
OLCグループ全体のCO2排出量のうち、約70%が電力の使用によるもの。このため太陽光パネルの設置や園内の電力を「見える化」するエネルギー管理システム(EMS)も導入する。さまざまな施策を複合的に進めて省エネにつなげる努力を重ねる。
OLCは23年度までの10年間で5000億円規模の投資計画を公表している。集客を左右する大型アトラクションの建設や新エリアの構想などに関心は集まるが、その裏ではかけがえのない地球環境を思いやろうとする地道な試みがある。ディズニーの世界観と共存するのに適した素材を生み出すことができれば、化学産業にとって新しいビジネスチャンスの1つになるはずだ。
(高橋篤志)
【写真】(左上から時計回りに)土産物袋は植物由来PEを約40%配合/ディズニーシーを周遊する「ビッグシティ・ヴィークル」はすべて電気自動車に切り替える計画/より詳細な分別ができるゴミ箱を、まず園内5カ所に設置