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試練の時 インドネシア(下)
日本の多面的協力不可欠
2億4000万人の人口を擁するインドネシアの内需をターゲットに進出する企業は少なくない。しかし、インドネシアが「中進国の罠」に陥ることなく、経済の好循環を生み出すには内需だけに依存せず輸出を強化することが不可欠だ。インドネシア国外で勝負できるモノ・サービスを輸出することで国内に付加価値が蓄積し、それによって貿易収支が改善、ひいては通貨ルピアの安定やインフレ抑制にもつながる。
3500ドル。インドネシアの1人当たりGDPだ。ASEANの中でシンガポール、ブルネイ、マレーシア、タイに続く5番手だ。ジャカルタ首都圏に限っては5000ドルに達しているとの試算もある。一方で、インドネシアでは1日2ドル未満で生活する貧困層がいぜん5割近くいるといわれている。数字だけではなかなか実態はつかめない。
*インフラも着々*
長年課題に挙げられてきたインフラ整備。ジャカルタ市内の道路渋滞は年々悪化し、また一度大雨が降ると道路が冠水する状況が一向に改善されない。しかし、着実に整備が進む動きもある。長年検討されてきた地下鉄工事がようやく着工、道路渋滞の改善に期待が膨らむ。地下鉄工事には日本が資金協力だけでなく、専門家を送るなど多様に貢献している。災害に強い日本のインフラ技術はインドネシアの発展に大きく貢献できるだろう。
裾野産業の集積が遅れているインドネシア。しかし自動車産業では、ライバルのタイを目標に取り組みが加速しつつある。トヨタは一昨年、人材育成センターを設置。車両製造技能の各種研修を行っている。現地法人の野波社長は「従業員の技能向上だけでなく、ノウハウの現地移転を図るのが狙い」と説明する。ここでは従業員だけでなく、サプライヤーや一般学生にも講習や研修が解放されている。またトヨタは、インドやフィリピンに設立している技術学校の設置も計画中だ。
*AECで存在感*
来年発足が見込まれるASEAN経済共同体(AEC)の中で、インドネシアが存在感を示し、高い競争力を維持するには人材育成が急務だ。クロルアルカリ最大手のアサヒマス・ケミカルの工場内には、トレーニングセンターと呼ぶ施設がある。ここでは各種製造プロセスで発生する可能性のある現象や事故の原因を、座学だけでなく体感できるのが特徴。ローカル社員がローカル社員に指導・教育する自律的な循環が生まれている。JICA(国際協力機構)やジェトロ(日本貿易振興機構)など日本の政府機関も、日本での研修や専門家派遣などインドネシアの産業振興に貢献している。
日本とインドネシアが国交を樹立し56年が経つ。これまでインドネシアが荒波に直面するなかでも、多くの日本企業が同国にとどまり、ともに歩んできた。インドネシアは世界で最も大きな親日国といわれる。同国が今抱える多くの課題の解決に、日本は資金だけでなく技術や人材育成など多くの面で貢献できる。友人として支え合えば、試練の時を乗り越えられるだろう。
(渡邉康広、清川聡)
【写真説明】アサヒマス・ケミカルの工場内にあるトレーニングセンターで研修を受けるエンジニア。インドネシアにとって人材育成は急務な課題だ