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2011年03月17日 前へ 前へ次へ 次へ

天然油脂価格の上昇に的確な対応を

 天然油脂の価格上昇が、油脂・界面活性剤業界の収益を圧迫している。パーム核油とヤシ油が1トン2000ドル台、牛脂が1200ドル台となり、2009年に比べ2ー3倍と過去にない高値で推移している。中国やインドをはじめとする新興国の洗剤や潤滑油など工業用需要もおう盛なうえ、投機マネーも流入して市況を引き上げている。中長期的に見ても新興国における油脂製品の需要拡大は避けられないことを認識して、対応が迫られる。
 こうした需給状況に加え、最近はパーム農園が川下のオレオケミカルへの投資を活発化している。07年にパーム農園のIOIやKLKが脂肪酸メーカーを積極的に買収した。09年はサイムダービーがコグニスオレオを買収し、タイのPTTケミカルと合弁でエメリーオレオケミカルズを設立。昨年はパーム油の世界大手ウィルマー・インターナショナルがマレーシアの脂肪酸メーカーであるナチュラルオレオケミカルズを買収した。パーム農園が油脂製品の川上から川下まで押えることで、価格決定権を握りつつある。
 油脂は8割超がマーガリンやショートニング、ドレッシングなどの食用に利用され、残りが工業用になる。工業用途ではラウリン系脂肪酸を多く含むパーム核油やヤシ油、ステアリン酸系脂肪酸を多く含むパーム油や動物系脂肪酸が用いられる。油脂を化学変化させて脂肪酸やグリセリン、脂肪酸メチルエステルなどの工業用原料になる。これら原料とその誘導品は、界面活性剤、樹脂添加剤、製紙用薬剤、医薬品添加剤、潤滑油原料など幅広い産業で活用されていることから、油脂の価格上昇は幅広い産業に影響を与える。食料品、洗浄剤、医薬品は東日本巨大地震の被災地でも不可欠な支援物資で、そうした物資にも脂肪酸誘導品が利用されていることを忘れてはならない。
 すでに油脂製品価格の6次値上げを打ち出したファインケミカルメーカーもあるが、原材料の高騰はメーカーの収益に直結している。日本経済はデフレが続き、シャンプーや洗剤など最終商品の値上げが難しい市場環境の中で、油脂製品の価格転嫁は容易でない状況にある。しかし油脂を原料とするファインケミカル製品の値上げができないと、メーカーの事業継続も困難な状態に陥るのは必至だ。
 パームやヤシが栽培できる地域は限られている。生産国の動向を注視しつつ、調達ソースの多様化など原料の安定確保に向けた対策が必要になる。日本経済の持続的成長のためにも産官が協力し、長期的視点でこれらの課題に真剣に取り組む必要がある。


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