国内市場の縮小を背景にグローバル化が進む自動車産業。プラグインハイブリッド(PHV)や燃料電池車(FCV)といった次世代環境車の開発・実用化も進展するなど自動車部品業界を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。今年5月に就任した志藤明彦会長(ヨロズ代表取締役会長)に、自動車部品業界の状況や日本自動車部品工業会の取り組みを聞いた。

 新日鉄住金は4日、日鉄住金鋼管およびエイチワンと共同で、角型鋼管による3次元熱間曲げ焼き入れ(3DQ)技術を用いた自動車のフロントピラーを開発したと発表した。金型を使用せずに複雑な形状の超高強度鋼管を高効率で製造できる技術であり、フロントピラーに採用することで優れた前方視認性や部品の軽量化を実現する。5月から発売されているホンダの新型NSXに採用されており、今後はボディ骨格全体への採用拡大を目指して自動車メーカーに積極提案していく。

 西川ゴム工業は、自動車用防音部品の高性能化を推進する。車内の快適性・静寂性向上の市場ニーズに対応するため、新たにドア内部に装着するドアホールシールを改良。比重を従来モデルの0・11から0・08へと小さくし軽量化を図るとともに、シート断面の形状変更などで防音効果を20?30%向上することに成功した。新製品はすでに自動車メーカー向けに量産を開始しており、性能を広く訴求することで採用拡大を目指す。

 ダイキョーニシカワ(広島県安芸郡)は、ポリプロピレン(PP)製インテークマニホールド(インマニ)を開発した。耐熱グレードのPPを採用することで150度Cの耐熱特性を確保するとともに、専用設計によりエンジン部品としての強度や剛性、耐久性などを実現。既存のナイロン製に対し、材料置換により15?20%の重量軽減と低コスト化が可能になる。ダウンサイジング化などによる使用環境の温度上昇を念頭に自社材料開発に取り組むことで、もう一段の高性能化を目指す。

 大同特殊鋼とホンダは12日、ハイブリッド車(HV)用駆動モーターに適用可能な高耐熱性と高磁力を兼ね備えた重希土類完全フリーの熱間加工ネオジム磁石を世界で初めて実用化したと発表した。大同特殊鋼は岐阜県で来月から量産・出荷を開始し、HV用駆動モーター用磁石市場に参入。ホンダは今秋発表予定の新型「FREED」(フリード)を皮切りに、新型車に順次適用を拡大していく。

 サウジ基礎産業公社(SABIC)のポリカーボネート(PC)素材「LEXAN樹脂」が、トヨタ自動車の限定スポーツカー「86GRMN」のリアクォーターウィンドウに採用された。従来のガラスと比較して約50%の軽量化を実現しており、同ウィンドウへのPC素材の適用は量産車で初めて。採用にあたっては、ベースのウエットコートの上にフレキシブルなガラスライクのプラズマコートを施すことで高い品質水準を達成している。

 次世代輸送機器の開発において材料の特性向上と並び必要とされるのが接合技術。材料特性やコスト、生産方法に応じて各材料を組み合わせて使用するマルチマテリアル化が進展しており、アルミと鉄や金属と樹脂といった異種材料を確実かつ効率的な接合を可能とする技術の開発が求められている。

 軽量かつ高強度で寸法安定性にも優れる炭素繊維強化プラスチック(CFRP)。その特性から航空機やレーシングカーなどの構造材料として使用されており、燃費向上を目的とした車体軽量化ニーズの高まりを背景に、トヨタ自動車のレクサスLFAやBMWのi3など市販車に適用する試みが始まっている。CFRPの最大の課題は材料および加工コスト。現在の水準では輸送機器の構造材料で最大の市場規模を有する自動車(量産車)への適用は難しく、利用拡大のためにはコスト低減化技術の確立が不可欠。開発で後れをとると市場の覇権を奪われることにもなり、先行するわが国の優位性を維持するためにも不可欠となっている。

 金属系軽量素材として利用拡大が期待されるチタンとマグネシウム。耐食性や強度に優れるチタンは、構造材料としてすでに航空機や自動車などで利用されている。資源量も比較的豊富だが、製造工程が複雑なため他の金属材料に比べて材料価格が高いのが課題。一方、比重が1・8と実用金属のなかで最も軽量なマグネシウムは、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)と並び次世代構造材料として注目されているが、構造材料として輸送機器で利用するためには化学的に活性で燃えやすい、加工性に劣るといった欠点をクリアする必要がある。

 比重が2・7と鉄の約3分の1と軽いアルミニウム。比強度が大きく鋼材を代替する金属系軽量素材として、自動車や航空機、鉄道車両といったさまざまな輸送機器の構造材料として使用されている。国内では年間166万3000トン(2015年実績)のアルミ製品が輸送機器向けに生産されており、このうち155万1000トンがダイカスト部品を中心とする自動車用。自動車のアルミ化で先行する北米では、CO2排出規制の強化などを背景に、アルミ製パネル部材の1台当たりの使用量が12年の6・3キログラムから25年に61キログラムへ拡大するとの予想もある。

 他の素材に比べて圧倒的なコスト競争力を有する鉄鋼材料。設計や加工・接合、評価・解析といった基盤技術の充実に加え、社会インフラを含むリサイクル性にも優れ、そのコストパフォーマンスの高さから自動車用構造材料ではメイン素材として開発が進められている。軽量化ニーズに対しては高張力鋼板(ハイテン)で対応。普通鋼材の引っ張り強度270?330メガパスカルに対して、同440メガパスカル以上のハイテンや同980メガパスカル以上の超ハイテンの採用が進んでおり、すでに冷間プレス向けに同1・2ギガパスカル級が、熱間プレス向けでは同1・9ギガパスカル級のハイテンが量産化されている。

 自動車をはじめ航空機や鉄道車両などの世界的な需要拡大を背景に、省エネや環境負荷低減を目的としたより効率的な輸送機器の研究開発が活発化している。エンジンやモーターといった動力機構の効率化とともに、軽量素材や異種材料接合などマルチマテリアル化を可能とする要素技術の開発競争が世界規模で繰り広げられている。国内では経済産業省の未来開拓プロジェクトとして「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトがスタートしており、産業の国際競争力に直結するその取り組みを紹介する。

 住友電気工業は、自動車分野において独自開発したマグネシウム圧延板材の用途開拓を推進する。新たに温間プレス成形および溶接によりシートフレームを試作。肩パイプ以外の板厚を1・5?2倍とすることで鋼フレーム並みの剛性を確保しつつフレーム重量が1・3キログラムと約60%の軽量化を実現した。マグネシウムは実用金属のなかで最も軽量であり、同社は材料置換による軽量効果を訴求することで構造材用途(プレス部品)での用途拡大を目指す。

 独ティッセンクルップは、独自開発した亜鉛マグネシウム合金メッキの国内提案を開始した。自動車鋼板向けの同メッキは、マグネシウム添加により優れた腐食保護性能とプレス工程における使いやすさを実現したのが特徴。内板部品はもとより外板部品にも適用可能な塗装外観を達成しており、すでに欧州で販売を開始している。その特性および性能により鋼板部品の低コスト化に寄与することから、同社では亜鉛メッキからの代替を働きかけていく。

 トヨタ自動車が、エンジンや燃料系のホースなどに使われる合成ゴムのグリーン化に着手した。新たに実用化したバイオヒドリンゴムはポリマーレベルで70%のバイオ化率を達成。石油化学系からの代替を実現する経済性も確保した。国内生産する全車種のバキュームセンシングホースの切り替えに加え、燃料系やブレーキ系ホースへの展開によりCO2削減を進める方針。1台当たり約300グラム使われるヒドリンゴムの全面置換も可能とみる。トヨタの取り組みにより、先行する樹脂に続き合成ゴムのグリーン化が本格的に進むことが期待される。

 独ティッセンクルップは、自動車向けに繊維強化プラスチック(FRP)製コイルばねを開発した。ばね材料に炭素繊維やガラス繊維もしくは両方を組み合わせた繊維複合体を採用。金属製に比べて50%以上の軽量化を可能とする。独自設計により優れた耐へたり性を実現しているほか、疲労耐久試験で200万回以上の寿命回数を達成。自動車メーカーと実車搭載に向けた取り組みを進めており、2018年に量産化する計画。

 住友理工グループの東海化成は、自動車分野における独自成形法「TcPM」の採用拡大を推進する。低圧成形(LPM)の一種である同成形法は、従来法に比べ形状自由度が高く優れた生産性を実現しているのが特徴。接着剤を用いずに表皮材との一体成形が可能であり、このほどトヨタ自動車から発売された新型「プリウス」のドアオーナメントにも採用された。内装デザインの多様化を背景に、採用車種および適用部位の拡大に向けた提案活動を積極化していく。

 日本精工は、ハイブリッド自動車(HV)や電気自動車(EV)の駆動部向けにクリープ(静止荷重や回転荷重による変形)を起因とした振動を抑制する軸受けを開発した。駆動モーターの高速回転化に対応するもので、高温耐油性に優れるOリングを独自開発するとともに、高度な解析技術により素材を変えずにOリング溝付き軌道輪(外輪)の剛性を確保。標準品(Oリングなし)に比べ回転荷重時のクリープ限界荷重を約5倍に引き上げ、機械的に固定する既存の対策品に対して低コスト化と組み付け性の向上を実現した。2020年に15億円の売り上げを目指す。

 藤倉ゴム工業は、独自製法による炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の用途開拓を推進する。新たにゴムとの一体成形技術を開発することで、振動減衰をはじめ耐摩耗性やすべり止め、非電導化といった機能を付与できる。独自技術によりゴムとCFRPとの強固な接合を実現しており、振動減衰機能を応用したダンパーのほか、パイプ内面にゴム層を設けた軽量高強度な配管パイプといった用途の拡大を見込む。同社は保有技術をベースに提案活動を展開していく計画。

 アキレスは、自動車内装用表皮材の高機能化を推進する。高級車を中心に増えている淡色系内装デザインに対応するため、新たにSR(SoilRelease)加工による独自防汚技術を開発した。新技術はトップコートに親水性を付与し、ジーンズ汚れ(水性)や黒ずみ汚れ(油性)を浮かして拭き取りやすくする効果がある。シートやドアトリムなど内装材全般に適用可能で、来春に発売される日系メーカーの高級車への採用が決まっている。表皮材の差別化技術として採用拡大に取り組んでいく。