新日鉄住金-九大、ハイテン破壊メカニズム解明、材料設計へ応用期待

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 新日鉄住金と九州大学大学院工学研究院は、高張力鋼板(ハイテン)の一種である複合組織(DP)鋼の破壊メカニズムの解明に成功した。大型シンクロトロン放射光施設「SPring-8」での4D観察により、遅れて生じるマルテンサイトの空隙が急成長して連結することで鋼板自体が破壊されることを確認した。DP鋼は自動車用鋼板として採用が拡大しており、解明した破壊メカニズムをベースに鉄鋼材料の高性能化が期待される。

 DP鋼はシリコンやマンガンといった元素を添加することで、柔らかいフェライト中に硬いマルテンサイトが分散した組織構造を形成した鉄鋼材料。強度と加工性を高次元で両立しているのが特徴で、複雑な形状をした自動車骨格部材の材料などに広く使われている。破壊現象に関してはこれまでに5つのメカニズムが報告されているが、フェライトとマルテンサイトが3次元的に複雑に絡み合う組織構造のためプロセスそのものはよく分かっていなかった。
 研究グループでは、SPring-8を用いたX線CT技術をベースに3D画像を連続的に取得し、そのデータを基に新たに開発した組織の特徴を特定できる高度な画像解析手法を適用することでDP鋼の破壊プロセスの4D観察に成功した。その結果、初期段階のフェライト同士の境界剥離やフェライト境界とマルテンサイトの接合点の破壊などで生じる空隙の成長を追い越して、マルテンサイト自身の割れで生じた空隙が急成長することが破壊の原因であることを解明した。
 これにより、破壊メカニズムを制御するように材料組織を設計することで、より高強度で加工性に優れた鋼板を製造できる。今回の研究成果からは、DP鋼の特性向上にフェライト同士やマルテンサイトの境界部の改良は不要であり、マルテンサイトの形や空間的な分布制御が有効であることが分かった。この知見を応用すれば、レアアースのような特殊元素の添加や現在より複雑で高コストな製造プロセスに頼らない高性能DP鋼の開発も夢ではない。
 また、今回用いた評価解析技術の適用により、さまざまな組織形態を持つ鉄鋼材料の破壊機構を特定することが可能となった。SPring?8では、被写体とカメラの距離が160メートルと世界最大の超高倍率X線コンピューター断層撮影(CT)技術を構築しつつあり、実現すれば今回のDP鋼より複雑な組織やより微細な組織を有する先進鉄鋼材料の評価・開発にも応用できるようになる。
 自動車用鋼板は、世界的に高まる車体軽量化ニーズを背景に、より一層の高強度・易加工性が求められている。今回の研究成果はそれを可能とするブレークスルーとして注目される。

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このページは、web staffが2017年1月31日 16:51に書いたブログ記事です。

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